延べ654社、売上高で2兆8,000億円超

2020年上場企業「新型コロナウイルスによる業績上方修正」調査 東京商工リサーチ

Research

2021.02.04

新型コロナ感染拡大のなか、2020年に売上高や利益を上方修正した上場企業(以下、上方修正企業)が551社あることがわかった。複数回の上方修正を含むと延べ社数は654社にのぼる。上方修正額の合計は売上高が2兆8,159億9,900万円に達する。

※2020年に「業績予想の修正」や「従来予想と実績との差異」などの適時開示で業績(売上高・最終利益)の上方修正を開示した上場企業のうち、新型コロナの影響があったものを抽出し、全決算期を対象として集計。前回調査は2020年9月18日。複数回上方修正した企業や対象決算期が異なるケースや「業績予想の修正」と「従来予想と実績の差異」の両方を開示しているものなどは別カウントし、延べ社数とした。

最大はイオンの5,000億円

売上高の上方修正額が最も大きかったのは、総合スーパーなどを経営するイオン(株)。「在宅時間の増加による食料品等の生活必需品、感染症対策のための衛生用品等の需要拡大に対応し、GMS(総合スーパー)事業の食品部門やSM(スーパーマーケット)事業、ヘルス&ウエルネス事業において売上を大きく伸長」し、売上高を5,000億円上方修正した。次いで、大和ハウス工業(株)の3,500億円。理由は「巣ごもり消費の拡大による物流施設開発へのニーズの高まり」などを挙げ、当初想定を上積みした。

業種別 最多は製造業

業績を上方修正した551社の業種別では、最多が製造業の214社(構成比38.8%)で、前回調査の構成比31.6%(177社中56社)から7.2ポイント上昇した。次いで、小売業の88社(構成比15.9%)、サービス業の84社(同15.2%)の順。内食需要の増加を受けた家庭向け食品関連や、感染対策意識の高まりによる衛生用品関連、在宅時間を快適に過ごすための家電製品や家具など、コロナ禍で定着する「新しい生活様式」に即した製品を扱う企業を中心に上方修正が目立った。このほか、EC販売などのオンライン事業やテレワークと関わりの強い情報・通信業も79社(同14.3%)だった。コロナ禍では「家庭内消費」がキーワードに浮上し、関連した製品やサービスを扱う業種、企業の追い風になっている。

理由別「経費減少」が最多

上方修正の理由別では、「経費減少」が最多。外出自粛による出張の減少や会議のオンライン化、テレワークの普及などで経費が圧縮され、利益面の上昇に繋がった。次いで、「巣ごもり消費増加」、「内食需要増加」、「テレワーク需要の高まり」の順。

コロナ禍で「新しい生活様式」の浸透に伴い、食品スーパーやホームセンター、家電量販店など、家庭内消費や感染防止対策に関連した製品・サービスを取り扱っている企業を中心に、業績が好調に転じている。このほか、3密回避のレジャーとしてアウトドア関連用品や車・バイク関連でも好調企業がみられた。

年末から年始にかけ、「Go Toキャンペーン」の停止や再度の緊急事態宣言など、企業業績に再び不透明感が出てきた。消費関連を中心にマイナス影響が懸念されるなか、「Withコロナ」にどのように適応していくのか。上場企業も例外なく、企業の命題になっている。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

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