コロナ影響が深刻 1年間で12.5%減少

「大手居酒屋チェーン」店舗数調査/東京商工リサーチ

Research

2021.04.01

チェーン展開する大手居酒屋の店舗数が大幅に減っている。居酒屋を運営する上場主要13社の1年間の飲食店舗数は、2020年12月末で前年同期から12.5%減ったことが、東京商工リサーチの調査でわかった。個人経営の飲食店などに比べ、大手が展開する店舗は面積が広く、スタッフ数も多い。都心部の店舗は、ランニングコストが大きな負担になっており、店舗営業を継続するより、見切りをつけて「スクラップ」を選択しているようだ。21年1月の再度の緊急事態宣言など取り巻く環境は厳しさを増しており、学生や主婦などのアルバイト、パートの雇用環境の悪化だけでなく、取引先への発注量の減少、都心部の空きテナントの増加など影響はさらに広がっている。

※本調査は居酒屋を展開する上場13社の有価証券報告書から、店舗数などを集計した。

「串カツ田中」以外は減少

上場する居酒屋チェーン13社の店舗数は、20年12月末(決算期により11月末を含む、以下同)で合計6,136店だった。19年同月時点では7,009店で、1年間で873店減少した。

13社では、唯一、串カツ田中だけが276店(20年11月末)と前年同月の273店から3店舗増えた。ほかの12社は、いずれも前年同月から減少した。

都心部中心に展開する企業で減

1年間の減少率が最も高かったのは「金の蔵」などを運営する三光マーケティングフーズの41.7%減だった。以下、期中に焼肉チェーン「牛角」事業を譲渡したJFLAホールディングス(以下、HD)の33.1%減、都心のターミナル駅に多数の飲食店を出店するダイヤモンドダイニングの親会社のDDホールディングスの24.6%減の順。13社のうち、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の主要幹線に積極的に出店していた企業がコロナ禍で店舗を撤退するケースが目立つ。

固定費負担など課題は山積

従来型の居酒屋業態の店舗は、多くの集客が望めるのと同時に、利益率の高いアルコール飲料の消費も期待できる。このため、雇用への寄与に加え、食品や飲料などを扱う卸業者やメーカーなどの取引先は多い。コロナ禍で、居酒屋チェーンなどは営業時間短縮の要請などで営業面は直撃を受けているが、雇用調整助成金の特例措置を積極的に活用しており、同措置の期間延長は一定の効果があるとみられる。一方、緊急事態宣言の再発令による外食控えにより、21年1月の総務省の家計調査では、2人以上の世帯での外食への支出は前年同月比42.9%の減少と状況は依然として厳しい。長引く時短営業の影響により同調査では20年3月から11カ月連続で、前年同月を下回る水準で推移している。

都心部を中心に今春は歓送迎会などの宴席、会合は引き続き自粛傾向とみられ、コロナ以前の水準までの需要回復には時間を要する。都心部を中心にテナント賃料などの月々の固定費負担も重く、店舗撤退の動きは今春も避けられない。スクラップによる繁華街の空洞化の懸念も高まるなか、感染防止、需要喚起の“板挟み”状態は長引くものとみられ、各社は当面我慢の経営が続きそうだ。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ