盆栽の可能性を広げる

ひのうえ松楽園 事業統括・相談役 樋上 勝敏さん

Interview

2017.03.16

実家は、曽祖父の時代から100年以上、盆栽業を営む「樋上松楽園」。樋上勝敏さん(38)が立ち上げたのは「ひのうえ松楽園」。生家で代々受け継がれてきた技術を生かしつつ、現代の生活になじむよう開発した盆栽「Jubon(ジュボン)」の販売を中心に行う会社だ。一方で東京のコンサルティング会社に現在も勤務しており、その仕事を通じ、さまざまな業種の人と出会うことが、盆栽の新商品開発におおいに役立っているという。
子どものころから剪(せん)定や針金の技術を教えてくれた、父の背中に憧れた。だが学生のとき「これからの時代、盆栽業界は技術だけで戦うのは厳しい」と感じるようになった。卒業後は飲食店店長を経てコンサルタントとなり、チェーン店のマニュアル作りや、新商品開発などに携わった。そんな時、父から家業をサポートしてほしいと声がかかる。「盆栽のことはずっと気になっていて。何か力になりたいと思いました」

一度、外の世界に身を置いたからこそ見えることもある。実家に帰り、まず感じたのは業界の基準と消費者のニーズとのギャップだった。「職人が技を競い見事な枝ぶりに仕上げる大きな盆栽、そういう伝統も大切です。でも、一般のお客様が買うならそんな商品は置く場所もないし、手入れもできないと思います」。現在、盆栽はブームで世界的にも注目されている。その人気のすそ野を広げているのが、小さくおしゃれで、インテリアとしても取り入れやすい商品だ。

そこで、新たな商品開発に取りかかる。「モノを作るだけではなく販路も開拓する。モノ、人、お金の流れを見直し新たな仕組みづくりを目指しました」
盆栽の生産技術」という地域資源を 活用した「Jubon」

盆栽の生産技術」という地域資源を
活用した「Jubon」

完成した商品「Jubon」は、10日に1度の水やりで育てられる画期的なミニ盆栽。10日の「ジュウ」と盆栽の「ボン」が名前の由来だ。

簡単な手入れですむ秘密は「根の処理」にある。通常、小さい盆栽は土が少ないため保水力が弱く頻繁に水やりが必要だった。そこで、根全体が土の外側を包み込む形になるよう、成長を予測して根切りする。そうすることで、必要以上に水が器から流れ出ないようになり、水やりの回数を減らすことができた。また、木の性質を見抜き一つひとつ土の配合を変え、根の成長に合わせて鉢底の穴の位置も変えている。「代々受け継いだ職人の技があるからできた商品。技術を目に見えない鉢の中に生かした点が特徴です」
対面販売を中心に商品のよさを伝える

対面販売を中心に商品のよさを伝える

もう一つは“未完成の魅力”もある。気に入った盆栽とそれを植える鉢を選んで好みのひと鉢を完成させる。自らコーディネートすることで商品に愛着が湧き、購入した盆栽をSNSで発信するお客さんも多い。百貨店での催事にも積極的に参加し、若い世代や雑貨店といった新たな顧客開拓につなげている。

今後は、高松工芸高校の生徒のほか、漆器、石材、木材加工といった他業種と連携し、香川のものづくりを盛り上げていきたいと考えている。盆栽を育てるアプリの開発や権利防衛にも着手している。アプリをきっかけに、実際の盆栽に興味を持ってくれる人が少しでも増えれば、との思いからだ。「まずは物が売れること。その売り上げで資金ができたら、伝統を守るために使えばいい」。第三者の厳しい視線を持ちながらも、根底には盆栽への愛情がある。

編集長補佐 石川 恭子

樋上 勝敏 | ひのうえ かつとし

1978年 7月 高松市生まれ
2008年12月 東京のコンサルティング会社 入社
2015年 6月 有限会社樋上松楽園相談役 就任
2016年 4月 株式会社ひのうえ松楽園事業統括・相談役 就任
写真
樋上 勝敏 | ひのうえ かつとし

株式会社ひのうえ松楽園

住所
高松市鬼無町山口471-1
TEL:087-813-1967
事業の概要
盆栽製品の生産、加工、販売
鉢物植物商材の企画・開発、コンサルティング
設立
2016年4月
認定
四国経済産業局
「平成28年度地域産業資源活用事業」認定
地図
URL
http://jubon.jp/
確認日
2018.01.04

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