「廃業検討率」が大幅悪化、中小企業の25.6%が「資本性劣後ローン」の提案受ける

第15回 香川県「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査 東京商工リサーチ

Research

2021.06.03

4月の中小企業の「廃業検討率」は9.2%で、改善傾向にあった3月から4.1ポイント悪化した。新型コロナウイルス感染拡大により「まん延防止等重点措置」が実施されるなかで、企業心理が大幅に冷え込んでいることがわかった。

金融支援の副作用である「過剰債務」解消が中小企業の課題に浮上しているが、金融検査上、自己資本とみなされる「資本性劣後ローン」の金融機関からの提案は、大企業の20.0%、中小企業の25.6%が受けている。金融機関では、地方銀行が多かった。各地の地域金融機関が、コロナ禍に苦しむ中小企業の経営改善に積極的に取り組む姿が浮かび上がる。

4月15日に「事業再構築補助金」の申請受付が開始され、事業再構築を「実施、または検討」しているのは、大企業で20.0%、中小企業で56.9%だった。コロナ禍の先行きは不透明だが、多くの企業がポストコロナを見据えて進んでいる。

※2021年4月1日~4月12日にインターネットによるアンケート調査を実施、有効回答98社を集計、分析した。

※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

今回の調査では、改善傾向に転じていた「廃業検討率」が再び悪化した。コロナ禍が長期化するなか、度重なる時短要請や休業要請は企業の疲弊感を強め、「あきらめ型」の廃業や倒産を誘発しかねない。すでに「実質無利子・無担保融資」(受付終了)で資金を繋いだ企業のさらなる業況悪化は、問題になりつつある過剰債務を深刻化させかねない。

また、返済の見通しが立たない追加融資は、廃業と倒産の垣根を近づけ、いわゆる「ハッピーリタイヤ」が叶わない企業を増大させる恐れもある。コロナ禍初期は緊急避難的な資金繰り支援も必要だったが、時間が経った今、政府や自治体、金融機関には、こうした点を見越した枠組みの構築も念頭にした継続的な支援が必要だ。

「事業再構築補助金」の申請受付が開始され、事業再構築を「実施、または検討」している割合は中小企業で56.9%にのぼった。ただ、新たな事業が黒字化するまでに見込んでいる期間は「1年以上」との回答が8割近くを占め、その間の資金繰り支援も重要になる。

また、複数の事業を展開する大企業と違い、中小企業の場合は単一事業のみのケースもあり、不採算事業の切り離しによる再建は難しい。金融機関を含めた伴走する支援者は、販路拡大や生産性の向上など、長期的な取り組みが必要になる。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 立花正伸

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