連携することで壁を越える

百十四銀行営業統括部地域活性化室室長東原隆啓さん

Interview

2017.02.16

課題解決

地域活性化

観光

農業

百十四銀行が婚活デスクを設置、観光振興や農業分野にも力を入れている。「預金」「融資」など私たちがイメージする銀行の業務とは一見かけ離れたこれらの取り組みの中核を担っているのが「地域活性化室」だ。東原隆啓さん（51）は、その初代室長。「辞令を受けた時は戸惑いもありました。しかし、今は地域活性化室の取り組みの成果が当行の、そして香川の財産になると信じています」

室長になる前は、ほとんど法人営業担当として過ごした。「例えば、売り上げが伸びないという課題に対し、解決策は販路開拓や新商品開発、事業承継など企業によって違います。そこで課題を解決する最適な提案ができた時は結果も出ます。銀行の仕事の面白さを実感しました」

その経験は現在の業務にも生かされている。「地域活性化室に求められているのも課題解決です」。取り組むべきは国や県が進める地方創生。人口が減り地域経済が縮小することは地方銀行にとっても死活問題だからだ。「大きな課題ですが、これを木の幹だとすれば地域、企業、個人が抱える悩みや問題は枝や葉です。それらを一つずつ解決していけば、地域経済の発展につながると思います」

香川の課題は何かを考え、それに対応できる8つの専門デスクを地域活性化室に設置した。「香川にとって何が効果的か。できることは何でも挑戦していきたい」

専門デスクの中でも他県にない取り組みとして注目されているのが、観光振興デスクの主な活動である「瀬戸内モニターガールズ」だ。行員と県の職員など20～50代の女性で組織。「モニタリング研修会」で毎回違うエリアを訪れ、あまり知られていない魅力的な見所やグルメなどの地域資源を発掘・発信している。小豆島の手延べそうめんをテーマにした研修会では、原料やそうめんのおいしさについて再発見。その魅力をガイドマップにまとめた。東かがわ市を訪れた際のコースは、旅行会社のシニア向けプランに発展した。

瀬戸内モニターガールズは
メンバーを固定せずボランティアで参加

そんな各専門デスクの活動に欠かせないのが、地域の観光協会と営業店からの情報だ。モニタリング研修会のプランを決める際は、営業店にエリア内の事業所や見所をヒアリングする。ある事業所が後継者不足に悩んでいるという情報があれば、事業承継デスクや婚活デスクが解決に動く。営業店と各デスクの連携を強化すれば成果につながる。だからこそ「数字や結果が求められる銀行の中で、すぐ効果が見えない地域活性化室の仕事を理解してもらう。なぜ地方創生に取り組むのか伝えることが大切なんです」

他企業や県、市町との連携も重要だと考えている。2016年には四国の地銀4行が「四国アライアンス」を提携。四国創生に向けた産業の振興・育成・取引先企業の販路拡大に取り組む中で、海外向けの商談会も行う。また、瀬戸内ブランド確立のため瀬戸内エリアの地銀6行、日本政策投資銀行とともに「（株）瀬戸内ブランドコーポレーション」にも出資した。銀行全体が大きな変化を迎える中、地域活性化室がどんな役割を果たすべきか模索する日々が続く。

地元商品を県外に発信するため
地方銀行フードセレクション2016出展を支援

「高校まで香川で過ごしましたが、今思うと地元のことを何も知ろうとしていませんでした。ここにはない何か、を求めて県外に進学しましたが探さない限り、どこに行っても何も見つからないんですよね」。現場に極力出かけるという東原さんは、改めて香川の魅力を知ったという。「その魅力をより多くの人に伝えたい。そしてもう一つ、この仕事を通じて目先の数字にとらわれることが多かった自分の価値観が大きく変わりました。だから、すぐに成果が出なくても地道に続けていきたいですね」

編集長補佐　石川恭子

東原隆啓 | ひがしはらたかあき

: 1965年高松市香川町（旧香川郡）生まれ
1988年 3月松山商科大学経済学部卒業
1988年 4月株式会社百十四銀行入行
2005年 6月丸亀支店得意先二課長
2009年 1月東京支店得意先一課長
2010年 4月本店営業部得意先一課長
2012年 4月岡山南支店支店長
2014年 4月営業統括部地域コンサルティンググループ長
2015年 4月営業統括部地域活性化室長
2016年10月営業統括部副部長兼地域活性化室長
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