誰もやらない だからこそ挑戦を

塚田木材 専務 塚田 浩之さん

Interview

2016.06.16

坂出市富士見町の塚田木材

坂出市富士見町の塚田木材

製材所として1903年に創業した塚田木材は、12年前に新たな挑戦を始めた。それは古材の販売だ。仕掛けたのは専務取締役の塚田浩之さん(44)。「木材のプロという意識をいったん捨てて、徹底的にお客さんの要望に応えることにしたんです」
塚田さんは大学卒業後、商社に就職し東京で働いていた。IT部門の担当で、国内外を飛び回る刺激的な日々を過ごしていた。4代目の社長である父から家業を継げと言われたこともなく、塚田さん自身も継ぐ気はなかった。だが、家業の落ち込みを目の当たりにして気持ちが変わった。「両親からも何かしら感じるものがあって、会社を3日休んで実家に帰ったんです。これは何とかしないとまずいと思いました」

30歳で塚田木材に入社。現場の仕事を覚えるために昼間は工場で作業を手伝い、夜はパソコンに向かった。伝票を1枚1枚繰って、事業の流れと顧客を把握した。従来通り、丸太を仕入れてカットし販売するだけでは生き残っていけない。

家具を作ろうか、塗料メーカーと協力してセット商品を売れないか・・・いろいろ考えた。その中で事業化までこぎ着けたのが古材の販売だった。デザイン性の高い木材として、これまでとは違う見せ方ができると考えたのだ。

古民家の解体を手伝い、古材を買い取るところから始めた。古材の製材や加工は誰もやりたがらないことだった。中に釘や石が入り込んでいる可能性があり、機械の故障を招くからだ。「たくさん失敗しましたが、誰もやらないからこそ仕事になるんだと思います」

今は日本国内だけでなく、アメリカやカナダからも仕入れる。清潔感のある古材に仕上げることに力を注ぐ。金属探知機で異物を調べ、高圧のエアブラシで丁寧にクリーニングする。

曲がりくねっているのがいい、ぼろぼろのデッキ材が欲しい、穴がたくさん開いたものはないか。顧客のニーズは様々で用途も広い。飲食店や美容室、洋服店に使われることが多く、最近ではリノベーションの流れも手伝って、住宅にも取り入れられるようになった。顧客の8割が県外だ。

ある時、京都の古民家から出たケヤキの柱をカウンターに仕立てた。それが大手コーヒー店に採用された。以来、全国の店舗で塚田木材のカウンターが使われている。「古材はヴィンテージジーンズと同じで、年数を経てできるもの。時間が経たないと手に入らないものが今買えるって、面白いですよね」

2008年に仕入れと販売で協力し合う「古材日和」というグループを作った。秋田、東京、滋賀、福岡の木材業4社と業務提携を結んでいる。「売上の数値目標はシビアに設定します。木材業界でまだまだ頑張りたいと言う人たちがメンバーなので、協働することでビジネスの幅がぐっと広がりますね」。議論が白熱し会議が4時間に及ぶこともある。
塚田さんが古材と同時に展開を考えたのが、ハードウッドデッキ事業だ。雨風にさらされる住宅のベランダや店舗のテラス、トラックの荷台に使う耐久性の高い木材を扱う部門で、4歳年下の弟・智大さんに任せている。

「従来の製材所の仕事と古材、ハードウッドデッキの合わせ技でうまくいっています。これまで会社を守ってくれた先代に感謝です」。今後、県内の製材所や木工所ともチームを組んでみたい。香川の技術が結晶したものづくりで日本全国、世界へ打って出たいと闘志を燃やす。

副編集長 鎌田 佳子

塚田 浩之 | つかだ ひろゆき

1971年11月 坂出市生まれ
1994年 3月 大阪大学工学部 卒業
1994年 4月 兼松株式会社 入社
2002年 8月 塚田木材株式会社 入社
      専務取締役 就任
写真
塚田 浩之 | つかだ ひろゆき

塚田木材株式会社

本社
坂出市富士見町一丁目2番19号
TEL:0877-46-2775
事業概要
木材製品の製造・販売・輸入
資本金
9,000万円
社員数
8名
地図
URL
http://tsukamoku.co.jp/
確認日
2018.01.04

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ