顧客に寄り添い 暮らしをデザインする

旺建 社長 安守 直敏さん

Interview

2015.10.15

開放的な吹き抜けやウッドデッキ、間接照明が優しく包み込むリビング、キッチンに立てば窓からのぞく里山がまるで額に収まったアート作品の様に見える・・・・・・。

高松市春日町に本社を構える住宅メーカー・旺建は、デザインに特化した注文住宅が人気で年々順調に業績を伸ばしている。

「住宅に暮らす家族がどんな生活を送っていくのか。そこまで考えて良いものを提供するのが、つくり手の使命だと思っています」

安守直敏さん(51)は、38歳の時に脱サラし旺建を立ち上げた。

「家を売るという仕事は特別です。お客さんに信用してもらえないと絶対にやっていけない商売です」

お客さんに寄り添い、一緒に満足を追求する。安守さんは独自のやり方で顧客の信用を手にし、創業から10年余りで旺建を県内有数の住宅メーカーに育て上げた。

ワンストップでトータルデザイン

住宅メーカーと言えば、家を設計し、施工・販売するのが一般的だ。しかし旺建は家をつくるだけではない。土地探しから始まって、家具などのインテリアや照明、庭のデザインまで、住宅に関わるあらゆるものをトータルで提案する。「ライフスタイルは家庭によって様々です。丁寧にヒアリングして、ゼロからプランを組み立てる。暮らしそのものをオーダーメイドするイメージです」。住宅メーカーは通常、インテリアや庭は別の専門業者に任せるケースが多い。しかし、「ワンストップで全体を見た方が予算の振り分けもしやすく、お客さんのためになります」

旺建は積極的な営業活動はしない。顧客を訪問して売り込むのではなく、逆に訪ねて来てもらう。来てくれた顧客は徹底的にもてなし、一緒に家をつくっていく。「良いものをつくっていれば、お客さんは必ず来てくれる」。それが安守さんの考え方だ。

3年前、高松市春日町に新社屋「WHITE SQUARE」を建てた。広々としたスペースには施工事例や資材見本を自由に見られるギャラリーに加え、誰でも気軽に来てもらおうとインテリアや雑貨を展示・販売するブランドショップも併設している。「子ども連れの人にもお子さんのことを気にせず、見学やスタッフとの打ち合わせをしてもらえるよう、専属の保育士もスタンバイしています」

旺建は創業年こそ赤字だったが、売上は3年で5億円、5年で10億円、さらに10年余りで20億円を超えた。この間、安守さんがずっとスタッフに言い続けてきたことがある。「私たちは、自分たちがつくりたいものをつくるのではありません。お客さんがつくりたいものを汲み取って、プラスアルファして提案する。常にお客さん目線でいなければなりません」

同じ目線になることで求めたもの。それは、顧客に信用してもらうことだ。そこには創業後間もなくして味わった、安守さんの苦い経験があった。

「信用出来ないから」 破談に

元々、「家をつくりたい」という強い思いがあったわけではなかった。大学は経済学部出身で建築のことは何も知らなかった。漠然と「いつか起業したい」と思っていたが具体的なプランは無く、「名刺一枚で人と会える。いろんな会社を見て、やりたいことを探そう」と証券会社に入った。

高松支店に配属され様々な人と出会う中で、「ものづくりがしたい」という思いが芽生えてきた。大阪へ転勤の辞令が出たのを機に会社を辞め、高松市内の工務店を訪ねて社長にこう言った。「いずれ独立したいと思っている。修業させてほしい」。なかなか受け入れてもらえなかったが、手紙を書いて熱意を伝え、最後には「『社長、僕を入れないと損をしますよ』とまで言いました。すると、『そこまで言うなら、来い』と言ってもらえました」

人が5年かけてやることを1年でやる。その覚悟で懸命に働いた。「小さな工務店だったので、建築現場、設計、営業など一通り見ることが出来ました」。起業資金を貯めながら建築士や宅建の資格も取った。約7年、工務店で働いたのち、2002年に旺建を立ち上げた。だが、「あの時のことは忘れられませんね」

創業して間もない頃、もう少しで成約出来そうな案件があった。しかし契約を交わす直前でこう言われた。「安守さんのことは信頼している。でも、旺建という会社は実績が無いから信用出来ない。本当にごめんなさい」。運転資金を回していくためにも、どうしてもものにしたい大きな仕事だった。

「家を建てるというのは、人によっては一生で一番の高い買い物になる。住宅メーカーは特に、社会にもお客さんにも信用してもらわなければ続けていくことは出来ない」。目指すべき道が明確になった。「最初の10年は余分な投資もせず、きちんとした会社だと世間に認めてもらうことを目標にやってきました」。そしてこう続ける。「今となってはあの時、お客さんが契約しないと決断してくれたことに感謝しているんです」

デザインで家は面白くなる

本社内にあるインテリアショップ「COCO SPACE」 厳選ワインが楽しめるダイニングバー「AGORA」=高松市鍛冶屋町

本社内にあるインテリアショップ「COCO SPACE」
厳選ワインが楽しめるダイニングバー「AGORA」=高松市鍛冶屋町

自分のモチベーションは、面白いと感じるかどうか、お客さんが喜んでくれるかどうかにあると自己分析する。

一昨年、高松市内にレストランを2店舗、相次いで出店した。きっかけは、契約してくれた顧客を「ご飯を食べていってください」ともてなしたかったからだ。来年には会社の敷地を広げ、「新しい発想の飲食店」と「セレクト雑貨の店」をつくる計画がある。「会社としてはモデルハウスを建てた方がコストも安くて良いんでしょうけど、それだと面白くないですよね」。社員や地元の人がイベントを開いたり作品展をしたり、楽しく過ごせるスペースにしたいと考えている。「そこから何か新しいものが生まれるんじゃないかと、今からワクワクしているんです」

住宅以外にも今後、広げていきたい分野がある。老人ホームなど高齢者が利用する施設だ。「福祉施設もデザイン性を取り入れれば暮らしは変わると思うんです」。自身の母親が入院したことも、思い立った要因の一つだ。「自分の親を入れても良いと思える、本当に優しい施設をつくっていきたいですね」

現在、新設住宅の市場規模は約15兆円。近い将来、世帯数は減少に転じ、リフォーム・中古住宅を流通させようという国の政策もある。今後、新設住宅市場の縮小は避けられないと見られている。

屋根には太陽光パネルが載せられ、柱や床には節の無いきれいな人工木材が使われる。家が面白くなくなりつつあると感じている。「光や熱、風といった自然をデザインでうまく取り入れれば、高性能で効率的な暮らしが実現出来ます」。デザイン次第で家はまだまだ面白くなる。それが安守さんの信念だ。「お客さんの満足度を常に追求しながら、これからも面白いと思えることにはどんどん挑戦していきたいですね」


◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

安守 直敏 | やすもり なおとし

1963年 岡山県倉敷市生まれ
1987年 香川大学経済学部 卒業
    日本勧業角丸証券(当時)入社
1994年 高松市内の工務店で勤務
2002年 株式会社旺建 設立
    代表取締役 就任
写真
安守 直敏 | やすもり なおとし

株式会社 旺建

住所
高松市春日町163-1
TEL:087-843-5500
FAX:087・843・5501
資本金
5000万円
社員数
40人
事業内容

住宅デザイン、商業店舗デザイン
リフォーム、ガーデンデザイン
「orange coco」「AGORA」運営 他
確認日
2018.01.04

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