盆栽に魅せられて 日本へ

zazu 店主 ザビエ ブルセさん

Interview

2016.01.21

すらすらと出て来る讃岐弁は「鬼無の畑でおっちゃん達としゃべって覚えた」と言うザビエ ブルセさん(36)。フランス南部のトゥールーズ出身だ。三木町で妻の和代さんとzazu plantes et cafeを営んでいる。

「ザズ」はザビエさんの「ザ」と和代さんの「ズ」から付けた。「プランテ エ カフェ」はフランス語で植物とコーヒーを意味する。名前の通り、コーヒーや紅茶、ランチ、スイーツを楽しむカフェに植物を展示・販売するスペースを併設している。和代さん手作りのスイーツでゆったりとティータイムを楽しむのが、ザビエさんお薦めの過ごし方だ。
もともと盆栽に魅せられて日本へやって来た。14歳の誕生日に祖母からプレゼントされたのがきっかけだ。本や雑誌を読んで、手入れに夢中になった。外国への憧れもあり、21歳の時に初めて日本へ。愛媛県と熊本県で3カ月間農業を体験し、フランスに帰国後、専門学校で樹木の栽培方法や病気の予防法を学んだ。卒業後、24歳で再び来日。次は盆栽作家になるためだった。

初めの半年は高松市鬼無町に滞在し、その間にフランス語が堪能だった和代さんと出会った。その後、東京の盆栽作家に弟子入り。ほとんど日本語を話せなかったが、職人の仕事は見て覚えることが多く、苦にはならなかった。親方のもとで2年間修業し、和代さんのいる香川に帰って来た。

鬼無町の盆栽園で働いて技術を磨きながら、アルバイトで生計を立てた。喫茶店のウェイターや結婚式場のドアマン・・・出来ることは何でもした。「全然大変じゃないよ。生活のためには当たり前のこと。和代と一緒に店をやろうって夢もあったから」。異国の地でアルバイトを掛け持ちして暮らすのはさぞかしつらい思いをしたに違いない、そんなありきたりな想像は打ち破られた。

植物を扱う店を持つために資金を貯める一方で、盆栽は好きだけれど職人として生活することは難しいとも感じるようになっていた。歴史ある盆栽園が数ある中で、新規参入は簡単ではない。家庭を持てば自分の夢ばかり追いかけてもいられない。盆栽だけで商売をしない、そう決めると気持ちが楽になった。
念願だった自分たちの店は、オープンから3年が過ぎた。zazuでは多肉植物や観葉植物など様々な鉢植えを扱っている。手頃な値段の盆栽もいくつか並ぶ。ザビエさんが手入れした盆栽を飾ることもある。気に入っているのは、樹齢40年ほどの赤松だ。東京で修業していた頃から大切に育てている。「盆栽は芸術と植物の掛け合わせ。松に触っている時間はとても楽しい」

大好きな植物に囲まれて、妻の和代さんと営むこの店は何物にも代えがたい。盆栽は楽しみとして続けながら、zazuと家族を守っていく。植物が好きな人もそうでない人も集まって、楽しくおしゃべり出来るような店が理想だ。

「2人とも商売人じゃないから、お店の経営は難しい。そんなにドラマチックな人生じゃないよ」とザビエさんは笑う。心に秘める情熱は人には見せず、力まず、目の前の物事に真剣に取り組む。その姿に職人気質を見た。

ザビエ ブルセ

1979年11月 フランス生まれ
写真
ザビエ ブルセ

zazu plantes et cafe

住所
三木町氷上1970−5
TEL:087-816-8833
確認日
2018.01.04

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