自分の可能性は自分が決める

讃光工業 常務取締役 白井 名留さん

Interview

2014.08.21

「歌は名刺代わりです」


と言う白井名留(なる)さん(39)。『千の風になって』を伸びやかに歌ってくれた。音楽大学卒業、製薬会社勤務という経歴の持ち主だ。
産業用計量機を製造・販売する讃光工業。米や小麦といった農業用食品や、あらゆるものの原材料などの計量機を製造している。創業者は白井さんの曾祖父で、父が現在の社長だ。白井さんが同社に入社したのは、2011年のこと。それまでの経歴がユニークだ。

子どものときにはピアノ、高校生になると声楽を習った。高松の高校を卒業し、東京にある音楽大学の声楽科へ進学。卒業後は、歌手のマネージャーやサウンドクリエイターとして活躍。27歳でフリーランスになったが、音楽の世界で食べていくことは容易ではなかった。「親の世話になりたくないという変なプライドがありましたね」

一念発起で就職活動の末、大手製薬会社に入社。「そこで、社会人としての常識や営業のノウハウを学びました」。家業を継ぐきっかけになったのは、高松支社への転勤だった。両親や祖父母と久しぶりにゆっくりと過ごす中で、帰郷を考えるようになった。
「固定観念がないぶん、自由な発想で新しいことができるんだと思います」。讃光工業へ入社後、1年目は工場で研修。そのとき、全社員から話を聞き、自社の強みを教えてもらった。自己啓発シートを作成し、どんな仕事をしたいのかをそれぞれ再確認する機会も設けた。

社内システムの改革が必要だと感じ、提案したのが「チーム制」だ。チーム制を導入し、営業や技術といった部署の業務に関係なく、興味のある分野の活動に携われるようにした。

「チームインフォ」は広報活動を担当。同社で初めて、来客へプレゼントするノベルティグッズを作った。「チームトレイン」は研修のカリキュラムを考える。一般社員が管理職のメンタルケアを行ったり、他社見学の計画を立てたりと、新たな試みを行っている。

昨年から社員を労う「春祭り」を開催。家族同伴でバーベキューを楽しみ、社員やその家族、地域住民が触れ合うものだ。白井さんはピエロのコスチュームで、バルーンアートをプレゼント。その際、子どもたちには絵を描いてもらった。作品は、来客が必ず目にする場所に展示した。「社員の子どもや孫も働きたいと思える会社にしたい。『お父さんの仕事かっこいい』と誇りになるようなことができれば」

計量機は何よりも正確な数値が大切だ。機器にトラブルがあったときの対応が、顧客から評価される。「製品の性能向上はもちろん、サービスのレベルアップをしなければ。サービスの質を考えて、国内のマーケットを守っていきたい」

海外進出するのではなく、海外製品をうまく取り入れていくことを考えている。「お客様の選択肢が広がるとともに、私たちの技術力が上がるきっかけにもなるのでは」。今年の秋には、海外メーカーの種子消毒機器の代理店販売とメンテナンス業を開始する予定。自社製品は、省スペースでさらに耐久性のある新しい計量機を開発中だ。

「よく『理系でないと入社できませんか』と聞かれます。専門分野に関係なく、やる気があれば何だってできると思っています。私は音大出身ですが、はかりの製造に携わっていますから。自分の可能性を広げるのも狭めるのも、自分次第ですね」

「ハカリシレナイ ハカリノシゴト」。会社案内に書かれたその言葉が、白井さんの計り知れないパワーを表しているように思えた。

白井 名留 | しらい なる

1975年6月17日 東京都生まれ
1999年3月 国立音楽大学音楽学部声楽科 卒業
      歌手、サウンドクリエイター、ボイストレーナー、サウンドコンポーザーとして活躍
2004年8月 ファイザー株式会社 入社
2011年4月 讃光工業株式会社 入社
2014年7月 同社 常務取締役 就任
2021年4月 専務取締役就任
写真
白井 名留 | しらい なる

讃光工業株式会社

住所
香川県さぬき市長尾西877
設立
1948年4月30日
社員数
89名
TEL
0879-52-2591
事業の概要
各種農業用(米麦乾燥貯蔵施設関連)・一般用(医薬品、飲食品等)・産業用(各種資源粉体、エネルギー原材料等)・コンクリートバッチャーの計量機並びに周辺機器の製造・販売・メンテナンス業務
資本金
4,350万円
地図
URL
https://www.sanko-scl.co.jp
確認日
2021.09.04

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