夢を現実にする力

CAVIC 代表取締役社長 板坂 直樹さん

Interview

2015.11.19

「泣きながら泳いでいました。プールの中だと泣いているのが分かりませんから」。板坂直樹さん(47)は、水泳に明け暮れた少年時代をこう振り返る。時を経て社長として母校に帰ってきた。

移転に伴い使われなくなった旧引田中学校の校舎で、何か出来ないかと考えた。二つの事業が出来ればなお面白い。広大な敷地を生かせるという点で太陽光発電はすぐに決まった。あと一つがなかなか決まらない。歩いていてふと浮かんだのがチョウザメだった。「以前から養殖出来ることは知っていました。学校のプールが水槽として使えるし、地下水も豊富に出る。引田は養殖と漁業のまちだからちょうど良かった。チョウザメは言わば僕の後輩ですよ」

天然のチョウザメはカスピ海や黒海に生息している。キャビアの主な産地はその周辺国だ。環境の変化や乱獲によるチョウザメの減少が問題視されるようになっていた。「ワシントン条約でキャビアの取引が規制されて、国内外でキャビアの価格がわっと上がった。そんな時に手を挙げたんです」 

2013年5月から養殖を始めた。体育館にも水槽を並べ、現在8千匹のチョウザメを育てている。今年のキャビア生産量は600キロを見込んでおり、1キロ当たり30~50万円で販売する予定だ。
今は高松でチョウザメを加工しているが、いずれ引田で行いたいと考えている。そのため、元々調理実習室だった部屋を改装中だ。新しい加工場が出来ることで、新たな雇用も生まれる。地元の期待も感じている。「東かがわにいると、知らない人からも『直樹くん頑張りや』と声を掛けられるんですよ」。養殖場の名前は「東かがわ・つばさキャビアセンター」。地元の人になじみの深い山の名前から付けた。

引田だけでは手狭になったため、徳島県鳴門市の養鰻場跡地を取得した。養殖場の屋根をソーラーパネルにして、鳴門でもチョウザメの養殖と太陽光発電を行う。来年1月から稼働し、引田と合わせてチョウザメは約3万匹になる。

キャビアはインターネット販売のほか、板坂さんが経営するガーデンレストラン「林の散歩」で提供している。東かがわ市のふるさと納税のお礼品としてもエントリーしており、人気だそうだ。今後は東京と大阪の有名ホテルで使用されることが決まっている。

そして来年2月には東京・銀座にキャビアバーをオープン。世界中のキャビアを集めるが、メインはCAVICのキャビアだ。「輸入キャビアは保存のために塩分濃度が7~15%くらいありますが、実は産地では薄味で食べられています」。CAVICでは塩分濃度を3%に抑えている。「あくまで、卵のコクを出すためだけの塩分です。ふわっと柔らかい本来の食感が楽しめます」

板坂さんは大協建工の代表を務め、本業は内装業だ。父から会社を引き継ぎ、学習塾、ドッグラン、レストラン、太陽光発電、そしてチョウザメの養殖と事業を拡大してきた。「原動力は言ってしまえば『欲』なのかもしれません。でも自分のためだけにする仕事って大きくならないし、儲かりもしないでしょう。必ず何かのため、人のためという付加価値があることによって商売がうまくいく気がします」

モットーにしている言葉は「夢現力と試行力」。夢を実現するために、とにかく試みることが大切だと言う。半年前まで夢だと語っていたキャビアバーも形になった。「やってみないと分からないことは多いですよ。今まで出会った人たちが教えてくれました」

進んでいろいろな人に会い話を聞く。「若い人って、年長者の話を自慢だと言って聞くのを嫌がるでしょう。僕は大好きなんですよ。自分から聞きに行く。アッと思うことを手帳に書き留めるんです」

今年9月に国産キャビアの輸出が解禁となり、輸出にも乗り出す。「好きなことなら一生懸命出来るんですよ。どの仕事も楽しいですね」。目指すのはたくさんの「ありがとう」が集まる会社だ。

板坂 直樹 | いたさか なおき

1968年 東かがわ市生まれ
1990年 日本大学 卒業
    大建工業株式会社 入社
2001年 大協建工株式会社 入社
2004年 代表取締役社長に就任
2013年 株式会社CAVIC 設立
写真
板坂 直樹 | いたさか なおき

株式会社CAVIC(キャビック)

住所
[ 本社 ]

高松市香西東町547-3
TEL:087-897-3113

[ 東かがわ・つばさキャビアセンター ]

東かがわ市引田1850−2
事業の概要
水産物販売(キャビア)
資本金
800万円
従業員数
3名
確認日
2018.01.04

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ