ドローンで人命救助を

空撮技研 代表取締役 合田 豊さん

Interview

2015.09.17

ふわりと舞い上がり、一気に上空へ。ビルを真上から見下ろしたり、走るバイクに並走したり・・・。高画質で美しく、見終わると一つの映画を鑑賞したかのような感動すら覚えた。それは空撮技研がドローンで撮影した映像だ。

最近よく耳にするようになったドローンとは、小型無人飛行機(マルチコプター)のことだ。このドローンを人の役に立つこと、特に災害時の救助活動に役立てたいと懸命に取り組む人がいる。空撮技研の代表を務める合田豊さん(51)だ。
「とにかくアマチュア無線に夢中でした。自宅に20メートル近い鉄塔を立て、いろんな人と通信するのが楽しかったですね」。中学1年でアマチュア無線技士の資格を取り、中学・高校とはまった。就職後、夢中になったのがラジコンヘリだった。

「空からはどんな景色が見えるんだろう」。そんな気持ちから、ラジコンヘリにカメラを取り付けて空撮を始めた。レタス畑や豊稔池など地元の観音寺市の景色をたくさん撮影した。「小型飛行機を娯楽だけでなく、世間で役立てたい」。親類が地震で被災し、そう考えるようになった。「情報収集にも支援物資を送るのにもひどく難儀しました」。物資の運搬に使えるのでは、とひらめいた。

ラジコンヘリは緻密な仕組みを要するため価格が高く操縦も難しいが、ドローンは作りが簡単で価格も安い。GPSと姿勢制御装置を搭載しているため自律飛行が可能で、操作も格段に易しい。ラジコンヘリ歴25年の合田さんは、どちらの操縦もお手の物だ。運搬にはより安定性の高いドローンを使う。

30年以上勤めた会社を退職し、昨年11月に観音寺市で空撮技研を立ち上げた。手本となるようなビジネスモデルはない。不安はあったが、役に立ちたいとの気持ちが勝った。救命胴衣や浮き輪の運搬が出来るドローンを開発し、12月に救助活動のデモンストレーションを行った。「強い風が吹く中、たくさんの人に見ていただいて緊張しましたが、狙い通りに物資を運べました。大成功です」

今年6月には高松市内にドローン・ファクトリーをオープン。ドローンの展示、販売、技術指導を行う店だ。機体の購入者にはもしもに備えて「ドローン保険」も紹介している。ドローン・ファクトリーの店長を務めるのは、小野正人さん(37)。小野さんは、合田さんと共同でドローンによる貨物・物資輸送分野を研究し、実証実験を進めている。実験には香川大学工学部も参加する。

手軽さゆえ人気に火が付いたドローンだが、操縦者が機体の特性を熟知しないまま扱うと落下などの事故が起きる。合田さんは県内の事業者に呼び掛けて香川県ドローン安全協議会を設立。ガイドラインを策定し、安全利用のための講習会や啓発活動も行う。9月4日には、ドローンの飛行を規制する改正航空法が成立した。協議会設立は、今後厳しくなるであろう規制に、事業者が一丸となって対応するためでもある。

空撮技研では10月に開催される「東京エアロスペースシンポジウム」に、山あいなどで電線を敷設する際に必要な「パイロットロープ」を運搬・架設出来るドローンを展示する予定だ。

「香川をドローン先進県として、雇用も生み出せるようにしたい。瀬戸内海でロボットが自在に仕事をする。そんな夢も見ています」。上空から写真を撮ってみたい。そんな好奇心から空撮を始めた合田さん。人は空を飛べないからだろうか、翼に夢や希望を託すといった表現はよく耳にする。人命救助へと向かう合田さんの機体には、まさに希望の光が輝く。

合田 豊 | ごうだ ゆたか

1963年11月 観音寺市生まれ
1982年3月 三豊工業高等学校 卒業
1982年4月 日本電信電話公社 入社
2014年9月 NTT西日本 退職
2014年11月 株式会社空撮技研 設立、代表取締役 就任
写真
合田 豊 | ごうだ ゆたか

株式会社空撮技研

所在地
観音寺市大野原町大野原5316-1
TEL
0875-54-2600
事業の概要
無線航空機による撮影業務
機体製作販売、宅地建物取引業
資本金
300万円
社員数
2人
確認日
2018.01.04

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