まち全体を会社や宿泊施設に

UDON HOUSE 代表 原田佳南子さん

Interview

2019.07.04

今年4月に瀬戸内ワークス株式会社を設立した原田佳南子さん(35)は「地域に新しい職や働き方を生み出したい」と話す。2017年に楽天を退職、18年に香川へ移住し、宿泊施設「UDON HOUSE」の代表に就任した。
「地元がない」という原田さんは兵庫県で生まれ、幼少期から中学までを札幌で、高校からは東京で過ごした。08年に入った楽天ではトラベル部門に配属され、旅館・ホテルのコンサルティングや地方自治体のプロモーション支援に携わる。全国各地を飛び回り、多くの人に出会った。「地域の中でリスクを負いながら事業を手掛ける人は、圧倒的にかっこよかった。必要とされるのは地域の中で事業を起こしていく力。自分でも何かやりたい」と思い、楽天を退職した。

楽天時代に担当していた仕事の一つが、三豊市の地域商社「瀬戸内うどんカンパニー」の立ち上げだ。退職後も同社の設立とフォローアップを続けることになった。三豊市の構想の中には地域商社のほかに宿泊施設もあった。原田さんは物件探しとリノベーションを引き受けた縁で、代表を務めることに。
うどんクラス(うどん打ち体験)とフィールドワーク(農園ツアー)

うどんクラス(うどん打ち体験)とフィールドワーク(農園ツアー)

「山に山小屋があるように、うどん県にはうどんに特化した宿があってもいいのでは」との考えから完成したUDON HOUSE。宿泊客は必ず6時間の「うどんクラス」を受講しなければならない。うどん打ちを体験し、麺を寝かせている間にさぬきうどんの歴史を学んだり、近隣の農園に出かけて野菜を収穫したりする。「旅をしても地元の人と触れ合う機会は、なかなかありません。UDON HOUSEは内と外をつなぐ場。どれだけ長く香川に滞在してもらうかを考えています」

メインターゲットは外国人観光客。18年10月末のオープンから半年で、13カ国の人々が訪れた。海外メディアへの露出も意識する。英字新聞の「the japan times」やアメリカのテレビ局「CNN」、世界一のガイドブックと言われる「ロンリープラネット」などのウェブサイトで、うどんを作って楽しむ宿として紹介されている。

「人手不足は地域全体の課題。県外から人を呼ぶために生まれたのが、瀬戸内ワークスです」。原田さんは求人、雇用、人材育成を一社で行うのは負担が大きいと考える。「地域全体で取り組みたい。例えば『今日はUDON HOUSE、明日は父母ヶ浜のカフェ』といった働き方ができれば、働く側の選択肢も増えます」

楽天時代に感じた理不尽さも解消したい。観光シーズンであれば国内旅行でも安くない金額がかかる。「こんなにお金を払ったのに」と旅行者の不満は生まれやすくなり、その矛先は宿泊施設に向かうことが多いという。「ホテルが担う責任を地域で分散する。観光客と地元の人がどれだけ深く接点を持つことができたか、旅の面白さは人で決まると思っています」。まち全体が宿泊施設のようになっていくのが理想だ。

瀬戸内ワークスでは仲間探しを目的としたトークイベントを開催している。「高松と三豊、東京と三豊などを行ったり来たりする働き方ができたら面白いですよね」。寮のようなシェアハウスも、三豊市内に準備したいと考えているところだ。

鎌田 佳子

原田 佳南子|はらだ かなこ

略歴
1984年 兵庫県生まれ
2003年 東京都立国立高校 卒業
2007年 慶應義塾大学 卒業
2008年 楽天株式会社 入社
2017年    〃   退社
2018年 UDON HOUSE 代表
2019年 瀬戸内ワークス株式会社 代表取締役

UDON HOUSE

住所
香川県三豊市豊中町岡本1651-3
代表電話番号
0875-89-1362
地図
URL
https://udonhouse.jp/
確認日
2019.06.18

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