街の面白さは人がつくる

トラディショナルアパートメント 内田 大輔さん

Interview

2017.11.02

きっかけは従弟と10日間ほど出かけたヨーロッパの旅。今までホテルに宿泊して周辺の観光地を回る旅行しかしたことがなかった内田大輔さん(36)にとって、地元の人が住むアパートに滞在し、自転車で街を巡り地元の人と話をし、スーパーの珍しい野菜や調味料で料理をし、そこに住んでいるかのように過ごした旅は新鮮で楽しかった。「何気ない日常の中にも面白さはあるんだと。すると、人が大勢いる観光地が味気なく思えてきて」

数年後、勤めていた銀行を退職。祖母が持っていた築60年のアパートを改装して、瓦町駅近くにゲストハウスを開業した。
1店舗目のTraditional Apartment。 ゲストハウスは観光客と地元をつなぐ場所

1店舗目のTraditional Apartment。
ゲストハウスは観光客と地元をつなぐ場所

ゲストハウスが建つ場所は、高校卒業まで過ごした街。洋服店が並び、自身も古着屋さんでバイトをしながらお店の人たちにファッションや音楽、アートなど様々なことを教えてもらった。「そういう人たちがこの街を作ってきたと思っています。今、アートの街というイメージで県外や海外から香川を訪れる人も多いですが、そういう部分プラスこの街には独自の文化が根付いているということを伝えていきたい」

香川のよさを発信するもう一つの手段として、観光の出版物も制作した。ゲストハウスを清掃している時に行政の観光パンフレットがごみ箱にあるのを見て、捨てられないものを作ろうと思ったことも理由の一つだ。掲載されているのはありきたりの観光地紹介ではなく、パン屋さん、お好み焼き屋さん、茶畑・・・地元に根を張って生きる人たちだ。「街の面白さは人がつくる。有名な観光名所がなくても、そこに住む人たちが観光客を引き付ける魅力になると思います」
制作した出版物「SANUKI ZINE」

制作した出版物「SANUKI ZINE」

制作した出版物には、ページにスマホをかざすとそこに実際にいるような動画が流れるAR(拡張現実)の技術も取り入れた。そのAR用の撮影から発展して制作に取りかかったのが、ドキュメンタリー映画だ。題材にしたのは「与島」。瀬戸大橋開通当時は観光地として脚光を浴びたが、今はリゾートホテルが廃墟のようになり、人口減少・高齢化も進んでいる。そんな島の現実は「高齢化が進む日本の将来の姿かもしれないと思った。だから、警告の意味も込めて単純に自然がキレイな島という紹介の仕方ではなく、与島の“今”をそのまま伝える内容にしました」。一方で、この映像をきっかけに、こんな島があるんだと興味を持ってもらえたら、とも考えた。

市内に3カ所あるゲストハウスの経営、出版、映像制作-これらの活動の底にあるのは、まだ知られていない香川の魅力に光を当てたいという思い。そのためには「香川で暮らす僕自身が魅力的な人間じゃないと。香川まで面白くないと思われてしまうから」 (石川 恭子)

内田 大輔 | うちだ だいすけ

1981年 高松市生まれ
1998年 香川県立坂出商業高等学校 卒業
2003年 第一経済大学 卒業
    株式会社四国銀行 入行 
2008年 同行 退職
2015年 ゲストハウスTraditional Apartment開業
2016年 映像制作 TRIVEZINE設立
2017年 姉妹店Traditional House AKANE開店
    複合施設 THE BANKS
    映画「与島~石に灯す未来の火~」発表
写真
内田 大輔 | うちだ だいすけ

Traditional Apartment(トラディショナルアパートメント)

所在地
高松市塩上町1-3-7
TEL.090・2893・2640
事業概要
ゲストハウスの運営・管理
ほかに、ゲストハウス「Traditional House AKANE」と複合施設「THE BANKS」を経営。
出版、映像制作、HP制作を行うTRIVEZINEも運営
地図
URL
http://traditional-apt.com
確認日
2018.01.04

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