
ICT建機での操作画面
3Kから新3Kへ
その背景には、インフラの老朽化や災害対策の重要性からインフラの整備・保守へのニーズが高まっているにもかかわらず、技術者の減少や高齢化が進んでいる現状がある。
そこで、i-Constructionで建設現場の生産性を2割上げることなどを掲げている。
これらの取り組みを通じ、国は建設業界の「新3K」(=給与が良い、休暇がとれる、希望がもてる)の実現を目指している。
現場のDX、具体的にどういうこと?

敷き均し用建機のコントロール画面
i-Constructionは、調査・測量、設計、施工、維持管理に至る、建設プロセス全体を三次元データでつなぎ、新技術・新工法・新材料の導入、利活用を促進するというもの。例えば、今まで2人1組で長時間をかけ測量していたものが、ドローンやレーザースキャナーを使えば、短時間に一人で精度の高い地形測量ができる。ショベルなどを三次元データと連携したICT建機を活用すると、掘削する位置や深さを自動制御し作業者を補助してくれる。
維持管理の面でも、目視や打音・触診などでの点検が、ドローンやセンサーを活用して取得したデータを画像診断AI技術で自動診断、そのデータを遠隔地から確認する、という形に進化することも期待される。
これらのインフラDX実現のために欠かせないのが「三次元データ」だ。まず、ドローンやレーザースキャナーなどで地形や構造物を三次元の点群データとして測量する。それに、工事計画の三次元設計データと合わせることにより、盛り土の量を自動的に算出できるほか、設計図や構造を立体的に表現できるため誰もが完成した状態を理解しやすい、といったメリットが得られる。
このように、建設の各工程で三次元モデルを導入し、情報を充実させながらこれを活用し、関係者間で情報共有し業務の効率化・高度化を図ることを「BIM/CIM」(Building/Construction Information Modeling and Management)という。構造物の形を三次元で立体的に表したものに、使われている部材の名前、寸法、強度、数量といった情報を結び付けた情報モデル全体がBIM/CIMモデルで、これを各工程の技術者が共有することで、業務の効率化・高度化を図り、品質も向上する。
ほかにも、データの蓄積により、斜面の変状を確認し、崩れる危険性の高い場所を割り出す。斜面崩壊が発生した際に発生前のデータがあれば被害状況がいち早く把握できるなど、防災面での活用も期待できる。
さらに、都市全体の3Dデータをオープンデータとすることで、車の自動運転への活用、バーチャルシティの空間利活用も。建設業界のインフラDXから、新たな産業創出への可能性が広がる。

ドローンによる3D地形測量データ(左)に盛り土計画の設計データ(緑)を合わせたもの(右)。
計画の内容が分かりやすい
◆キーワード
i-Construction
具体的には、ドローンなどで測量、ICT建機を使った施工などが挙げられる。これらを実現して建設プロセス全体を三次元データでつなぐなど新たな建設手法を導入し、新3Kの魅力ある現場に改善しようとするもの。

BIM/CIM
設計・施工段階での活用例として、地元説明での3Dデータ活用で視覚的に理解しやすい説明が可能。また、3Dデータによる見える化で複雑な設計箇所の事前確認ができることにより、ミスの防止につながる。

【取材協力:四国地方整備局、四国クリエイト協会】
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