コロナ禍の赤字法人率66.1%、10年ぶりの悪化
2022年公表の都道府県別「赤字法人率」調査

東京商工リサーチ

Research

2023.06.01

赤字法人率66.1% 10年ぶりの悪化

2020年度の全国の普通法人281万8,077社のうち、赤字法人は186万4,249社(年2回の複数納税を含む)だった。赤字法人率は66.1%で、前年度から0.7ポイント上昇した。また、赤字法人数も前年度に比べ2.8%増(5万1,917社増)で、2年ぶりに増加に転じた。

赤字法人率はリーマン・ショック後の10年度に75.7%を記録したが、それ以降は9年連続で減少をたどっていた。しかし、19年度末から拡大したコロナ禍の影響で、20年度の赤字法人率はリーマン・ショック直後以来の上昇となった。

ただ、20年度の赤字法人率66.15%は、過去15年では18年度の66.11%に次ぐ3番目の低水準で、コロナ禍の影響と支援策がいずれも本格化した21年度以降の動向が注目される。

道府県別 30都道府県で赤字法人率が上昇

都道府県別で、赤字法人率が前年度より悪化したのは30都道府県だった。全国の赤字法人率66.1%を上回ったのは21都府県、下回ったのは26道府県。

赤字法人率の最小は、青森県の61.7%(前年度62.2%)。15年度以来、5年ぶりに全国最小となった。次いで、佐賀県61.9%(同62.1%)、福井県63.3%(同63.3%)、北海道63.3%(62.8%)、崎県63.5%(同64.1%)の順。

16年度から4年連続で赤字法人率が最小だった沖縄県は、前年度から3.7ポイント増と最大の悪化で64.5%(同60.8%)となり、16位に転落した。観光業が主要産業の沖縄県は、コロナ禍の外出や旅行自粛、インバウンド蒸発の影響を大きく受けた。
赤字法人率ワーストは、14年連続で71.9%の徳島県だった。ただ、前年からの改善幅は1.1ポイントで最大だった。以下、長野県69.7%、香川県69.3%、栃木県68.9%、群馬県68.7%の順。

徳島は、地場産業の木工関連の不況や少子高齢化、人口減少でサービス業他の業績低迷のほか、医療・福祉関係の競合などを背景に、赤字法人率が高くなったとみられる。

20年に開催予定だったオリンピック特需などで、19年まで企業の業績改善は進んでいた。だが、一転して20年度はコロナ禍が直撃した格好で、赤字法人率はリーマン・ショック時以降の10年ぶりの悪化となった。

都道府県別では、沖縄や京都など国内観光客やインバウンド需要に依存した地域で、ひと際赤字法人率が上昇した。長引くコロナ禍で21年度以降も一時的な悪化が懸念される。

赤字法人率は、コロナ禍が企業に与えた影響を改めて浮き彫りにしている。コロナ禍の支援が一巡した後、企業が独り立ちできるには、どのような支援策が必要か検討が求められる。
※ 本調査の赤字法人率は、普通法人を対象に「赤字(欠損)法人数÷普通申告法人数」×100で算出した。
※ 普通法人は会社等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人などを含む。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 有馬知樹

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