2023年度計画は、全産業ベース、製造業、非製造業とも二桁の増加
~四国地域 設備投資計画調査~

日本政策投資銀行

Research

2023.10.05

調査概要

㈱日本政策投資銀行四国支店(以下「DBJ四国支店」という)は毎年、四国地域における企業の設備投資動向についてアンケート調査を公表している。原則、資本金1億円以上の民間企業を対象とし、全国からの回答企業(5,432社)のうち四国地域で実施される設備投資額を集計したものである。2023年8月に公表した調査では、四国地域に設備投資を実施すると回答した企業は355社であった。

非鉄金属、化学など製造業が四国全体の伸びを牽引

今次調査では、四国地域の2023年度計画は製造業で25.3%増、非製造業で12.6%増、全産業でも21.2%増と、いずれも二桁増となる。

業種別にみると、製造業では非鉄金属、化学および繊維において、脱炭素社会を見据えたEV関連部品に係る能力増強投資や、自社施設内の省エネ投資などの増加による影響もあり全体では大幅増となる。非製造業では、運輸は燃費効率の良い新造船建造や商業施設新設投資などにより、通信・情報は維持更新投資により、サービスは宿泊施設新設により増加することから、全体では4年ぶりの増加となる。

香川県は2年連続の二桁増の計画

香川県の2023年度計画は、化学や電気機械などの製造業が牽引し、全産業ベースでは2年連続の二桁増(16.3%増)となる。

製造業は、前年度の大型投資の反動で窯業・土石が減少するものの、製品高度化に向けた工場増設のある化学に加え、工場新設のある電気機械などが増加することから、全体では大幅増(29.5%増)となる。非製造業は、商業施設新設などのある運輸に加え、不動産が増加するものの、前年度から物流関連投資が減少した卸売・小売などの影響により、全体では減少(2.3%減)に転じる。

脱炭素社会を見据えた投資や人流拡大に向けた動きも

四国地域の2023年度計画は、コロナ禍で見送られていた投資の再開に加え、脱炭素や人流拡大など中長期的な社会構造の変化に対応する積極的な投資も見られ、設備投資マインドは堅調であると言える。

脱炭素対応投資では、全体の伸びを牽引している非鉄金属において、EV向けの電池用次世代正極材料を中心とする能力増強投資があるほか、前年度比で減少となった電気機械においても、再エネ型の工場に対応した新設備導入や、次世代電池用部材を製造する工場新設の計画がある。人流拡大に向けては、宿泊施設新設や空港ビル増築工事、また鉄道の駅機能拡充など、観光やビジネスにおける需要回復、人流増加を意識した動きが見られる。感染症の懸念が一掃されたわけではないが、コロナ禍によって長らく停滞していたヒト・モノの動きが再開し、社会経済活動が正常化することは、香川県をはじめとする四国地域の活性化にとっても必要不可欠である。

人的投資の優先度の高まりと今後のリスク

今次調査と同時に実施した、全国の資本金10億円以上の大企業に対する意識調査によると、人的投資の優先度が前年度より高まっている。人材の獲得が喫緊の課題となる中、対応策として新卒や中途採用の強化のほか、約4割が賃金引き上げと回答した。四国地域においても賃上げに向けた企業の動きが確認できており、今次調査で表れた堅調な設備投資動向が、賃金上昇や人的投資を通じて人に還元され、本格的な景気回復に繋がることが理想的である。

一方で、懸念される材料としては、資源価格などの物価上昇や為替変動に加え、人手不足との回答が多い。これらの要因が設備投資に与える影響について注視していくとともに、その先を見据えたイノベーションやデジタル化など前向きな投資の動向にも注目して参りたい。

株式会社日本政策投資銀行四国支店 企画調査課 副調査役 藤岡 亜希子

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