「型にはまりたくない」 実用品のオーダーメード

helico 諏訪 匠さん

Interview

2013.09.05

 

 

目移りしてしまうほど種類豊富で色鮮やかな素材。万年筆やボールペンなどを、オーダーメードで作る工房「helico」のギャラリーだ。店主は諏訪匠さん(28)。商品を見れば、「匠」の名がぴったりだと感じる。

「ヘリコプリオンというサメが好きで、そこから付けました。工房の名前に、こだわりはありません」。作る「もの」にも良い意味でこだわらない。「『万年筆屋』『家具屋』などの型にはまりたくないんです。オーダーがあれば何でも作ってみたい」
ものづくりに没頭する環境は整っていた。7年前に亡くなった父は、家具職人だった。残してくれた工房には、使い込んだ道具や機械が並ぶ。諏訪さんは会社から帰ると、自宅で好きな小物づくりに熱中した。「父は金物一つでも京都へ買いに行くような人。ものづくりへの貪欲さを感じましたね」。小さいものが作れたら、大きいものも作れる。父がそう教えてくれたため、細かな作業を大切にしている。

高校卒業後、職業訓練校を経て建具店に就職。床材を扱う店に転職し、木工職人の腕を磨いた。「30歳までに自分の店を持ちたい」。漠然としていた目標だったが、ついに実現できた。昨年5月に退職し、今年1月に工房をオープン。「月によっては苦しいこともあります。まだまだこれからです」

諏訪さんが作るのは、万年筆やボールペン、ツールナイフなど身近な実用品。飾るような作品ではなく、実用的な機能を備えたものを作りたいと考えている。「欲しいと思うものを、欲しいときに作ってくれる。そんな職人になれたら」
きっかけは「マイ万年筆を持ちたい」と思ったことだ。ふと見た雑誌には、美しい万年筆が並んでいたが、どれも10~20万円の高級品ばかり。「それなら自分で作ってしまおう」。行動を起こす前に、「できない」「無理だ」という先入観は持たない。

扱い慣れた木材のほかに、プラスチック樹脂も材料に選んだ。木は使えば使うほど風合いが増し、樹脂素材は時間が経っても変わらない。それぞれに魅力がある。樹脂素材は、アメリカから取り寄せており、日本国内では珍しいものだそう。

万年筆やボールペンは注文から約1カ月で完成。ペンの形に切り出した後、何度も磨いて仕上げる。木はペーパーで研磨しオイルを塗り、防水加工を施す。プラスチック樹脂は耐水ペーパーで研磨した後、粉末や液体のコンパウンドで磨く。表面は滑らかで、宝石のように輝く。値段は、ボールペンが9800円~、万年筆が1万9800円~。

「僕が作るものは、安いとは言えません。だからこそ、わざわざ買ってくれるお客さんがいると、うれしい」。注文は工房で受け付けている。素材を手に取り、好みのものを選べる。定期的にクラフト作家の集まるイベントへ参加し、そこでも展示と販売を行う。11月、東かがわ市で開催される「フィールドミュージアムさぬき」にも参加予定だ。
ペンのほかに、印鑑や引き出しの「つまみ」、ワインのボトルストッパーなども作る。「『何屋』でもない、ものづくりの工房にしたい。『小物を作るなら、香川の諏訪』と言われる人になりたいですね」。ペンは、プレゼントとして購入する人が多いという。美しく輝く自分だけの文房具。肌身離さず使いたくなってしまうだろう。

諏訪 匠 | すわ たくみ

1984年11月30日 高松市生まれ
2002年 県立高松工芸高校インテリア科 卒業
2003年 (有)西山木工 入社
2005年 (株)三好商店 入社
2013年 helico オープン
写真
諏訪 匠 | すわ たくみ

Wood processing・オーダー万年筆 helico

所在地
高松市国分寺町新名491-6
TEL
090-7575-5987
URL
http://helicopen.exblog.jp/
確認日
2018.01.04

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