讃岐の豆文化

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2015.09.17

豆パンと煮豆の天ぷら

豆パンと煮豆の天ぷら

「醤油豆」「煮豆の天ぷら」など、讃岐の食卓に様々な「豆」が登場します。豆は、私たちが思っている以上に様々なシーンで活躍しています。今回は讃岐の食における豆の存在にスポットを当てたいと思います。

一般的に野菜は植物の葉、根、茎、肥大化した実などを食べますが、豆類だけは植物の「種」をいただきます。野菜としての豆類は、ビタミン類が豊富な緑黄色野菜的な一面と、豆独特のタンパク源を含むという一面を併せ持っています。また、収穫最盛期は野菜として利用し、収穫期を逃しても、貯蔵が効く乾燥豆として活用が可能という、栽培面でも特徴を持った作物です。そのため、豆類は野菜の中で独特の存在感を放っています。

香川県は温暖な気候を利用して一年を通じて豆を栽培してきました。春・立夏を迎えると、エンドウ豆とソラ豆が市場に出回り始め、夏から秋にかけてはサンド豆(インゲン豆)やコウシ豆(平サヤインゲン)、フロウ豆(ササゲ)、南京豆(落花生)、そして大豆と、初夏から秋にかけて季節を変えながら様々な豆が栽培されています。収穫された豆は煮物や炊き込みご飯などに姿を変え、日常の食卓に登場します。また、味噌、醤油、豆腐、餡子などの加工品となるなど、多岐にわたり利用されます。

讃岐の豆の文化の奥深さは、利用方法のバリエーションの多さにあります。全国的に食べられている煮豆や炊き込みご飯はもちろんのことですが、「醤油豆」「煮豆の天ぷら」など他県には見られないような加工品があります。

例えば、讃岐の三大郷土料理のひとつに数えられる「醤油豆」。ソラ豆を茹でる、煎るという料理は他県でもありますが、煎った豆をさらに醤油に付け込むという独特の調理工程が加わっています。ソラ豆という素材が十分にあったこと、そして毎日同じメニューが続くと食べ飽きてくるので、調理方法を変えながら食べてきたという生活の知恵を感じることが出来ます。

私たちが現在も日常的に食べる「醤油豆」「煮豆の天ぷら」という讃岐を代表する特異な食べ物は、季節毎の豊富な豆類があり、かつその素材を大切に使ってきたという讃岐の食文化が具現化したものではないでしょうか。煮豆の天ぷらを噛み締めると讃岐の味がしませんか?

“豆”知識

女木島の南京豆(落花生)栽培風景

女木島の南京豆(落花生)栽培風景

豆類は栽培的にも特殊な作物です。水田の畦に「畦豆」として大豆を植えて土の流亡を防ぎながら豆を栽培していました。また、マメ科植物の根には根粒菌が宿り、空気中の窒素を肥料として土の中に取り込む働きがあります。麦畑にソラ豆を植えて麦の生長を促したという記録もあります。また、豆は乾燥にも強いことから、女木島(高松市女木町)では、春にはエンドウ豆、秋には落花生と、豆の二期作が行われています。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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