日本人とリズム感 -「拍」をめぐる日本文化論-

著者 樋口 桂子/青土社

column

2018.02.01

「あなたはリズム感が悪すぎる」。この本の著者が突きつけられた衝撃の一言。そこからはじまった西洋とは違う日本独自のリズムの謎と正体を、音楽だけでなく文学、絵画、歴史、風土などのジャンルを横断して明らかにしていく日本文化論。この本の内容を簡単に言えばそうなります。

日本人のリズムは下や内側に向かって打ち下ろされ切断される稲作のリズムです。ヨーロッパのリズムは跳躍して先に進み、開放していたものが伸びてゆく連続したものです。本書ではこのことについて、いろんなエピソードを紹介しています。それらがあまりに面白いので本が付箋だらけになってしまいました。

リズム感も時代とともに変化します。著者は欧米のミュージシャンが来日した時のコンサートで、観客の手拍子が一拍目に手を打ついわゆる正拍打ちで戸惑ったといいます。

ところが1980年代中頃あたりから次第にウラ拍でリズムを刻んでゆけるようになった。これはデモのシュプレヒコールでも1970年代はリーダーが「戦争」といえば他の人たちが「反対」と返すものであったのが、昨今のシールズのデモでは「んせんそう、んはんたい・・・」とシンコペーションのリズムいわゆるウラ拍だといいます。

「ヨーロッパの近代思想は、隠された部分を表に曝け出して、目に見えるようにしていくものであった。リズムにおいても裏を露呈しようとした。ところが日本人の感性においては、裏は隠れながら、表と拮抗する形で、実際には強く自らを主張している」。スペースの関係でこの部分の紹介ができませんでした。興味のある方はぜひ本書に当たって下さい。

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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