
紹介されている曲は全部で66曲。スティーヴン・フォスターからエルヴィス・コステロまで。正直知っている曲は半分足らずです。一曲あたり4ページ、各所に添えられた約150点に及ぶ図版が素晴らしい。訳者の佐藤良明さんも言うように、ディランの依拠するところが歌にこもる民衆のコモンセンスとアメリカ文化のありようにあり、レノン=マッカートニーを相手にせず、ブライアン・ウィルソンは名前も出てこないのも、その軸足がカントリーとブルースとそのルーツならそれも納得できる気がします。若いころはペリー・コモやボビー・ダーリンなどは、バカにして聞きもしませんでしたが、この本を通して読んでみるとこれも納得してしまいました。
ところで日本にもこんな本を書く人はいないでしょうか。三波春夫、三橋美智也、北島三郎、森進一、美空ひばり、都はるみ、伊東ゆかり、藤圭子、ちあきなおみ、そのほか60人くらいはあっという間にあげられそうです。日本の場合、そのキーワードは民衆のコモンセンスではなくて情念でしょうか。ですからシティポップと呼ばれるものは、私はちょっと苦手です。
山下 郁夫
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
- 坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。 - 写真
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
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