リーマン10年 売上高は回復せず

リーマン・ショック後の企業業績調査 東京商工リサーチ

Research

2018.10.04

2008年9月15日、米サブプライムローン問題に端を発した米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻から10年。国内企業の業績は、07年度を100.0とすると全企業の売上高合計は17年度で98.8にとどまり、リーマン・ショック前の水準に戻っていない。一方、利益合計は震災復興や東京五輪に向け好調な建設業、物流が盛り返した運輸業がけん引し、162.0に伸びた。

※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する国内最大級の企業データベース(約480万社)を活用し、リーマン・ショック前の07年度から直近の17年度まで、11期連続で単体の業績比較が可能な26万5,763社を抽出し、分析した。

売上高と利益 好対照

全企業の売上高合計は09年度に84.7まで下落、その後は一度も100.0を回復していない。一方、利益合計は08年度に18.1と極度に落ち込んだが、13年度に100.0を回復し、17年度は162.0まで回復した。

産業別 小売業が苦戦

売上高(非上場)を産業別にみると、17年度時点で100.0を回復したのは、建設業、卸売業、不動産業、運輸業、情報通信業、サービス業他の6産業。最もポイントが高かったのは運輸業で110.2だった。一方、小売業は09年度に66.2まで低下。その後の回復ペースは鈍く、17年度も78.9にとどまっている。

利益合計(非上場)をみると、17年度時点では農・林・漁・鉱業と小売業を除く8産業が100.0を超えた。最もポイントが高かったのは建設業で423.4だった。公共投資の増加に加え、震災復興や東京五輪の特需が寄与。民需もマンション、オフィスビルなどの活況を背景に、大幅に改善した。一方、小売業は08年度に29.6まで低下し、17年度は74.0。労働集約型産業のため、人手不足と人件費高騰が収益面を圧迫している状況を映している。
東京商工リサーチ調べ

東京商工リサーチ調べ

地区別 四国は105.6

地区別の売上高合計(上場・非上場)は、09年度に9地区すべてが100.0を割り込んだ。11年度に北海道、12年度に東北が100.0を回復し、13年度には四国と九州も100.0を超えた。地方ほど公共投資の景気底上げ効果が大きいことを示しているようだ。

リーマン・ショック後の日本経済は回復過程にあるが、今回の調査では建設業など、一部の業種に支えられている側面が強いことが明らかになった。ものづくりの根幹を担う中小製造業の付加価値力の向上や労働分配率の底上げが急がれる。売上高はリーマン・ショック前の壁を乗り越えることが難しい状況にある。こうした時期こそ将来を見据えた営業施策、円滑な事業承継など足腰の強い中小企業を育成する施策が必要だろう。

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