出荷量増加と減少の社数が拮抗

第9回地ビールメーカー動向調査 東京商工リサーチ

Research

2018.11.01

2018年1~8月累計の全国主要地ビールメーカー出荷量は前年同期を1.0%上回った。だが、出荷量が落ち込むメーカーも増えており、業界が地ビールブームに沸く中、いつまでブームが続くのか危機感を抱くメーカーも出始めている。

※本調査は18年9月1日~25日に全国の主な地ビールメーカー217社を対象にアンケート調査を実施、分析した。出荷量は18年1~8月の出荷量が判明した75社(有効回答率34.5%)を有効回答とした。本調査は10年9月に開始し今回で9回目。

夏場の天候不順で微増

出荷量が判明した社の18年1~8月の総出荷量は、8,655.31.0%増)だった。月別で増加率の最高は4月(前年同月比6.4%増)で、次いで7月(同5.7%増)、5月(同2.8%増)の順だった。だが、出荷量の伸びが期待された夏場の8月(同6.0%減)は西日本など一部地域での天候不順の影響を受け、全体の出荷量が伸び悩んだ。
東京商工リサーチ調べ

東京商工リサーチ調べ

7年連続でエチゴビール

出荷量は全国第1号の地ビール醸造所のエチゴビールが7年連続でトップを守った。エチゴビールの阿部社長は「今後、輸出に力を入れる。価格面や商品の方向性でクラフトビールブームがどう変わるか注目している」と、業界の先行きを模索し始めている。
東京商工リサーチ調べ

東京商工リサーチ調べ

増加 6割割り込む

18年1~8月の出荷量が判明した社のうち、「増加」は41社(構成比53.9%)と6割を割り込み、「減少」は35社(同46.1%)だった。17年1~8月では7割のメーカーが出荷量を増やしたが、18年は増加と減少の社数が拮抗した。

「自社販売」を軸に

販売先については、「自社販売(イベント販売含む)」が34社(構成比44.2%)で、17年(同39.1%)に続き最多だった。次いで、「飲食店、レストラン」が19社(同24.7%)、「スーパー、コンビニ、酒店」が15社(同19.5%)だった。直営レストランなど自社販売に力を注ぐほか、地元の酒販店、コンビニなどの卸売にも力を入れていることがわかった。

 
知名度も高く営業力の強固な大手ビールメーカーが、地ビール業界に風穴を開けようと参入を進めている。中小企業の多い地ビール業界にとって、とてつもない“黒船”の来襲だが、地ビール業界は商品開発と「独自の味」にこだわり、市場活性化につなげようと前向きに捉えるメーカーも少なくない。政府の輸出拡大への後押しや酒税改正をどう生かして市場の活性化や地盤強固を図るか、各メーカーの経営戦略や力量が問われている。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

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