安心安全な食材で
日本一おいしい、を目指す

山清 代表取締役社長 松下 時夫さん

Interview

2018.11.15

木曜限定、できたてのあんパンを手に=綾歌郡綾川町 本社内キッチンスタジアム

木曜限定、できたてのあんパンを手に=綾歌郡綾川町 本社内キッチンスタジアム

山より大きい猪(しし)は出ない

山清のキッチンカーを 街の中に出してみたいんです

山清のキッチンカーを
街の中に出してみたいんです

今でこそ「有機」「オーガニック」と表示された商品や売り場も当たり前になったが、山清は20年ほど前から有機食品の製造・販売に取り組んだ。当初は有機の市場も小さく苦しい時期もあったが、食品への安全志向が高まる中、主力商品のあんこ、からし、きな粉や団子の粉をはじめとした“山清ブランド”の商品は、安心安全でおいしいと少しずつ浸透してきた。

国産・有機原料への移行、製造ラインの変更、商品の改良・・・。それらに商品開発担当としてかかわり、工場責任者も務めた松下時夫さん(68)は2015年、4代目の社長に就任した。創業家以外から初めての社長となったが、「打診された時にね、昔ラジオで聞いた『山より大きい猪は出ない』という言葉が浮かんだんです」。目の前に大きな猪が現れてもしょせん山より小さい。これからどんな困難があったとしても乗り越えられる程度のことだ。いくら悩んでも仕方ない。そう思って引き受ける決意をしたという。

すぐ食べられる新商品を

山清の主な商品

山清の主な商品

社長として、安心安全はこれからも守り続けていく。その上で、おいしさをさらに追求したいと考えている。例えば定番商品のあんこ。一般的には小豆と砂糖に、甘味を引き立たせるための塩を加えるが、塩味は舌で感じやすく小豆そのもののおいしさを邪魔するんじゃないかと考えた。そこで、塩は使わず必要最低限の砂糖だけで小豆のおいしさを味わえるよう改良した。

社員の意識を変えるため、製造と営業担当者には東京のデパートの売り場に行って商品が並んでいる様子を見てもらう。「自分たちが作っている商品をこんなふうにお客さんが買っているんだと分かると感動する。おいしいものを一生懸命つくらないといけない、という気持ちになると思います」。自らもイベントや料理教室に出かけ、料理人が商品を料理に取り入れるアイデアを見て、商品開発に生かしている。

おいしさには自信を持っている。一方で、あんこやきな粉は家庭でひと手間かけないと食べられないことに、もどかしさを感じていた。そこで、調理しなくても買ってすぐ食べられる新商品の開発にも力を入れている。県産の二条大麦を使った「ぷちぷち蒸し大麦」はその一つ。サラダやスープに振り入れる、ご飯に混ぜておにぎりにするなど手軽に使える上、食物繊維を豊富に含んでいる。

あんこや白あんを使った水ようかんをつくったほか、昔からある「鬼びっくり一味」をペースト状にした商品も発売した。また、毎週木曜には自社のあんこを使ったあんパンを、15個限定、会社の事務所で販売している。「まずは手軽に食べられる商品で、山清のことを知ってほしい。そこから、ほかの定番商品にも興味を持ってもらいたいと思っています」

キッチンカーで―

古民家カフェ(木・金・土曜営業 ランチは予約制)

古民家カフェ(木・金・土曜営業 ランチは予約制)

いくらおいしくても、独りよがりでは意味がない。世の中に認められる商品づくり、会社づくり―そのためには情報発信も大切だと考えている。会社の敷地内にある古民家カフェでは、からしやあんこ、加工が難しいといわれる小豆の微粉などを使った料理が味わえる。「カフェは商品のおいしさを実感してもらうだけではなく、使い方を伝える場でもあります」

ホームページでも「鬼からし」「無糖ゆであずき」「深煎り大麦パウダー」といった商品を使ったレシピを数多く公開している。営業マンが取引先の担当者やお客さんの前で使い方を実演するため、料理の練習もできるキッチンスタジアムを事務所内につくった。

※古民家カフェ(木・金・土曜営業 ランチは予約制)
古民家カフェのランチ

古民家カフェのランチ

近々、古民家カフェの隣にあるもう一つの古民家を、体験スペースにしたいと考えている。米と大麦と小豆の粉でパスタを作って、自分たちがつくった生パスタを食べられるコーナーをつくったり、からしの粒から油を搾りながら日本古来のからし油について説明したり・・・とアイデアは尽きない。

「いつ実現するか分かりませんが、最終的には山清のあんこやきな粉を使ったアイスクリームやかき氷、ぜんざいをつくってその場で食べてもらえるキッチンカーを街の中に出してみたい」。一方的に情報を伝えるだけではなく、お客さんの反応もダイレクトに返ってくる場所。「目の前でお客さんがおいしいと言ってくれたら、本当に嬉しいと思うんです」

食文化を伝える役割

「うちが扱う主な商品は、昔から食べられてきた伝統食材。だから、それらにまつわる地元の食文化や風習を守り、伝える役割もあると考えています」。半夏生(はんげしょう)の時期には団子を作って食べる、正月はあん餅雑煮を食べる。「団子は熱めのお湯で粉をこねると、なめらかになって時間がたってもかたくなりにくい。実際にお客さんにやってもらうと『本当だ』と感動する。そしたら忘れないんです」。小さな体験の積み重ねを、地道に続けていきたいという。

「最近、食物アレルギーが話題になっていますが、昔ながらの食材なら“日本人の食のDNA”に合うと思います」。さまざまな食べ物がある中で、安心安全な食材をおいしく加工して感動してもらう。「シンプルですが、それが食品会社の使命だと思っています」

石川 恭子

松下 時夫 | まつした ときお

1949年 高松市生まれ
1968年 高松高校 卒業
1972年 香川大学農学部食品学科 卒業
1975年 株式会社 山清 入社
2015年 代表取締役社長

株式会社山清

住所
香川県綾歌郡綾川町山田下3465-3
代表電話番号
087-878-2231
設立
1938年3月3日
社員数
35人(2021年8月現在)
事業内容
スパイス、あん、穀粉の製造販売
資本金
5,000万円
地図
URL
http://www.yamasei.jp
確認日
2021.08.25

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