
変化し縮小する国内市場で生き残るために同社は、市場規模3千億円といわれる収納材分野にいち早く参入、ユニット式収納材を開発して、販路の拡大に成功した。
「会社存続の方法は、シェア拡大、新製品開発、海外生産の拡大、の三つです」。淡々と語る代表取締役社長 丸山 徹さん(56)は、この三つを次々実現させている。将来にわたって原料材を確保するため、海外で種をまき、森を育てる植林事業も、その一つだ。
※(新設住宅着工戸数)「国土交通省資料」による。
1996年 1,643,266戸
2009年 788,410戸
縮小市場でも需要は増える
「和室天井材のシェアはトップですが、売り上げは全社の15%ほどしかありません」。天井材の売り上げが減って、1980年代後半から「収納材」分野に進出した。「最初に手掛けたのは押し入れの内部セットです。木目の印刷シートを張る天井材と、同じ技術が使えたからです」
手狭な家の中に物があふれて「整理・整頓・収納」の本が売れている。
「しまいこむだけなら『物入れ・押し入れ』で十分ですが、モノをしまうことをデザイン化した『収納ユニット収納材』が、女性の感性にフィットしたんです。需要は増え続けるでしょう」。キッチン、リビング、水回りなど家の「内装」に決定権を持つ女性は、「おしゃれ」に「便利」に「収納」することに、お金を使うと丸山さんは分析する。
原材料調達から販売までの一貫体制
「合板に付加価値をつけるために、合板に木目を印刷した紙をラミネートした『和室天井材』の製造を始めました」。経済成長期は住宅着工数も右肩上がりで、需要が一気に増えた。「当時、競合会社が20数社あったそうですが、コストや納期、商品力で優れていたので、だんだんシェアを広げて『和室天井材の南海』といわれるようになりました」
原材料の調達から、開発・製造・物流までの一貫体制と、支店や営業所を持たず、大手商社を窓口とした独自の販売体制が経営基盤を支えて、天井の南海は市場を制覇した。
シンプルモダン
「ホームページを見て、工務店に注文するお施主様が多いんです」。木製より値段は3倍ほど高いが、売れるそうだ。「やっぱり決定権は、女性でしょう」。丸山さんは推測する。
※(シンプルモダン)
ガラスや金属、強化プラスチックなど無機質的な素材を使った、「単純で飾り気が無く、現代的」なインテリアスタイル。
不景気でも生き残れる経営
「例えばインドネシアで在庫の3、4カ月分を買うと、日本で製品にして1カ月で売れても、回収する手形は4カ月です。キャッシュフローが豊かでないとやれません」。南海プライウッドは自己資本比率88.9%(2010年3月期)、盤石な財務体質が強みだ。
「天井材で利益が出ていた時代に、先代社長が不動産や株に投資をせず、内部留保に努めたおかげです」。ピンチになっても生き残れる安全経営、先代が残してくれた遺伝子は、丸山さんにも受け継がれている。
※(自己資本比率)
総資産に対する自己資本の割合、上場企業の平均が30%台。
市場は右肩下がりでもニーズは増える

開発しても売れないことも多いが
失敗は成功のためのステップ。
「成熟、多様化の時代、住宅着工数は右肩下がりですが、太陽光発電と燃料電池を合わせた省エネルギー、環境、耐震などの安心安全や、デザイン住宅などの感性追求など、新たな領域で市場のニーズは増え続けています。私たちが新しく開発できる分野は、むしろ広がっていると思います」
丸山さんは、早稲田大学を出てビクターで17年間勤め、今は当たり前になったコンパクト・ディスク(CD)の開発に技術者として携わった。
「新製品開発はトライ&エラーが当たり前で、成功確率は3割あれば良い方でしょう。開発しても売れないことも多いですが、失敗は成功のためのステップです」。失敗の効用に確信を持つ丸山さんにとって、住宅産業の市場規模は、依然として巨大で、すそ野が広い。開発の余地は無限だ。
森をつくる
「特注品や納期を急ぐもの、アルミ階段などの新製品は国内の志度工場で、定版の製品はインドネシアの工場で造ります」
熱帯雨林保護のため自然木の伐採が厳しくなった。06年、インドネシアの生産子会社を通じて、植林事業「ECO-RING SYSTEM(緑の循環システム)」を開始した。
現在40ヘクタールでファルカタという樹種の早成樹を植え付けている。8年以内に延べ425ヘクタールの植林地を循環活用して、伐採を7~8年周期で繰り返す植林事業の展開を計画している。
「原材料の安定確保と価格の安定、製品のコストダウン、現地での雇用創出、それに二酸化炭素削減にも貢献したいんです」。自然地域と共生する循環型事業のために森をつくる。1%でも2%でも「プラス成長、プラス環境」のために、「脱」縮小市場を目指して、丸山さんは種をまく。
※(生産子会社)
PT.NANKAI INDONESIA
資本金:5百万ドル
設立:2000年
所在地:インドネシア・スラバヤ
※(ファルカタ)
南洋桐。7~8年で直径40~50cmに成長するマメ科の植物。
街のぶらぶら歩き

「うどんを食べに、商店街まで歩きます。街の様子がよくわかります。車では気付かない、ざわめきやにおいを感じることができます」
店をのぞいて、陳列棚にガラスや金属を使っているのを見付けると参考になります。当たり前ですが、本屋には棚が多いので、つい書棚メーカーをうらやましいと思うこともあります」。意外な発見から、新しいアイデアが生まれるのが、楽しいに違いない。
最近のお施主様
どんなカタログを要求しているか、どんな製品に反応しているのか、ホームページへのアクセスデータを商品開発の参考にする。今いちばん多いのが「収納材」で、2番目が「階段」だそうだ。
宮川 栄之助
丸山 徹 | まるやま とおる
- 1953年 高松市生まれ
1977年 早稲田大学卒業
1980年 日本ビクター(株)入社
1997年 南海プライウッド入社
2001年 代表取締役社長就任 - 公職
- 2007年 日本プリントカラー合板工業組合 理事長
2010年 高松商工会議所 常議員
南海プライウッド株式会社
- 住所
- 香川県高松市松福町1丁目15番10号
- 代表電話番号
- 087-825-3615
- 設立
- 1942年10月
- 社員数
- 385名/連結1,453名(平成30年3月31日現在)
- 事業内容
- 建築内装材の製造・販売
- 資本金
- 21億2,100万円
- 地図
- URL
- https://www.nankaiplywood.co.jp/
- 確認日
- 2018.11.16
おすすめ記事
-
2018.11.16
簡単に住宅の収納プラン選べる
南海プライウッド
-
2024.06.20
最先端機器で検査 「選ばれるクリニック」へ
西高松グループ 代表 松本 義人 さん
-
2024.06.06
最先端センサ技術で観音寺から世界へ挑む
ヴィーネックス 社長 津村 学 さん
-
2007.09.06
逆風が改革のエネルギー
松浦産業株式会社 代表取締役社長 松浦 公之さん
-
2022.11.03
本格的な黒板の仕組みを手軽に学ぶ工作キット
ミニ・黒板工作キット/株式会社いわま黒板製作所
-
2022.05.19
介護の専門家と利用者、両方のニーズを形にする
シコク
-
2025.03.06
新工場が続々稼働 正しい方向へ、正しく導く
大倉工業 社長 福田 英司さん
-
2025.02.20
油圧の力で未来をつくる
ユニコム 社長 藤原 康雄さん
-
2025.02.06
人をつくり、美しく豊かな環境をつくる
日本興業 社長 山口 芳美さん
-
2025.01.03
新アリーナは
地域に何をもたらすのかPrime Person 新春スペシャル企画
-
2024.12.19
高齢者には恩返しを 子どもたちには未来を託して
らく楽福祉会グループ 会長 佐藤 義則さん