他人がしない、できることをやる

NHK高松放送局 局長 行成 博巳さん

Interview

2017.10.19

地元・香川で暮らすのは、高校卒業以来37年ぶりだ。丸亀高校から東北大学に進学。東洋史を専攻し、4年間ひたすら漢文を読んだ。中学・高校の社会科の教員免許と学芸員の資格を取得し、教員か研究者にと思ったこともあったが、興味のあったマスコミへの就職を決めて、1984年にNHKに入局した。

仕事の基礎は話を聞くこと

初任地は高知放送局。同僚たちが全国放送の番組を手掛ける中、企画書を何本書いても通らず、「編集もコメントを考えるのも下手」だった。そんな時担当することになったのが、NHKスペシャル「国境を越えた和解~上海列車事故補償交渉の記録~」だ。 88年3月、上海を修学旅行中だった高知学芸高校の生徒と教員28人が列車事故で亡くなり、日中間で補償交渉が行われていた。行成さんは生徒の遺族を取材。「お子さんを亡くされた親御さんの気持ちを考えると、やりきれない思いにもなりました。ただ高知に住む者として見届けなければと・・・」。遺族のもとに通い、誠心誠意話を聞いたことが、今の仕事の基礎になっている。
2カ月滞在したミャンマー取材

2カ月滞在したミャンマー取材

97年、軍事政権下のミャンマーを長期取材した「疾走アジア開かれた黄金郷~ミャンマー~」を制作。半年に及ぶ大使館との交渉の末に入国したものの、2週間ごとにビザを更新しなければならず、いつまでいられるのかと思いながら2カ月滞在した。「市民は戦々恐々と暮らしているのかと思えば、そうでもなくて。行ってみないと分からないものだと実感しました」
広島放送局では、プロデューサーとして室生犀星の小説を原作にしたドラマ「火の魚」の制作に携わった。ディレクターと一緒に企画から考え、脚本を渡辺あやさんに頼み、主演に原田芳雄さんと尾野真千子さんをキャスティング。2009年からこれまで、広島県、中国地方、全国ネットなど合わせて13回放送された。「繰り返し見てもらえる番組を作れたことは素直にうれしい」

感情を揺さぶるものか

行成さんが考える企画とは、上司が「こんなこと思いつかない」とうなるようなものだ。「他の人がしない、できない、気付かないことをやる。仕事には独自性が必要だけれど、自己満足は要らない。番組はより多くの人に見てもらうことが大事です」
制作した番組が新聞協会賞、文化庁芸術祭大賞、 ギャラクシー賞など数々の賞を受賞

制作した番組が新聞協会賞、文化庁芸術祭大賞、
ギャラクシー賞など数々の賞を受賞

管理職になった今、「現場には何も言わないようにしています。自分は自由にさせてもらったので。ニュースは早く正確に、番組は人の感情を揺さぶるようなものか。大切なのはそれだけです」。今年度、高松放送局では「香川がイチバン!」を合言葉に、食や人など地元の良いところを再発見することに取り組んでいる。



10月29日開催の「FM香川42.195kmいくしまリレーマラソン」には、高松放送局でチームを作って参加する予定だ。行成さん自身は広島勤務の時にマラソンを始めて、2日に1回、5~10キロ走っている。「個人では、地元の香川丸亀国際ハーフマラソンに出場します。狙うは自己新記録です」

鎌田 佳子

行成 博巳 | ゆきなり ひろみ

略歴
1961年 香川県丸亀市生まれ
1980年 香川県立丸亀高校 卒業
1984年 東北大学文学部史学科 卒業
    日本放送協会(NHK)入局
2001年 名古屋放送局 報道部チーフ・プロデューサー
2008年 広島放送局 放送部担当部長
2011年 編成局 ソフト開発センター
    チーフ・プロデューサー
2013年 仙台放送局 放送部長
2015年 関連事業局 専任部長
2017年 高松放送局 局長

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