
水を届ける仕事に誇り
大学では土木工学を専攻し、特に道路や橋梁など構造物について学んだ。卒業論文のテーマに選んだのは液状化現象のメカニズム。もっと研究を深めたいと、大学院に進んだ。大学時代の先生がとても尊敬できる人だった。この恩師の専門が河川工学だったこともあり、水に関わる仕事に就きたいと思うようになった。
水資源開発公団に入社後、技術職として施設の設計、工事の発注、工事現場の監督などを経験。2005年からは、早明浦、池田、新宮、富郷の各ダムを管理する徳島県の池田総合管理所で副所長を務めた。
赴任した年、渇水で早明浦ダムの貯水率が0%の日が続いた。ところが台風による大雨で、一夜にして貯水率が100%になった。貯水率が0%だったため、結果的にダムが洪水調節機能を発揮し、洪水被害が軽減できたと言う。「貯水率が劇的に回復したのと、地域のお役に立てたということで印象深い出来事ですね」
前任地は愛知県豊橋市の豊川用水総合事業部。豊川用水の施設は約50年前に完成したものであるため、耐震化工事や新たな水路建設を手掛けた。
仕事は次第に現場から管理へ。これまで培ってきたことを、若い人に伝えていきたいと思うようになった。舟橋さん自身が、先輩から言われて心に留めているのは、慣れた作業でも漫然とせずに、わずかな変化も見逃さないよう神経を研ぎ澄ませて臨むことだ。
確実に水を届けることが、水資源機構の第一の使命だと言う。「一日も欠かすことなく水を運んでいること、ライフラインとしての役割を担っていることに誇りを持って仕事をしています」
文庫本持ち歩く
高松から琴平にある管理所までの電車通勤の1時間は、本を読むのにちょうどいい。今読んでいるのは、古典の説話集「今昔物語集」の文庫版だ。「引っ越しでたまたま出てきたのを読み返してみたら面白くて。因縁話があったり、オカルト系のエピソードがあったり。読書家と言うわけではないですが、文庫本を持ち歩いています」
これからも地域のために
前回の香川勤務では、四国遍路を結願できないまま転勤となってしまったため、再挑戦するつもりだ。「ご利益があると言われるうるう年に、また香川に来られたのも縁を感じます。結願しないとお大師さまに顔向けできませんね」

以前は登山などにもよく出掛けた。佐賀県の加部島で魚釣り(左)。白馬岳(中)。香川用水管理所の皆さんと(右)
舟橋 弘師 | ふなはし ひろのり
- 略歴
- 1961年 4月 広島県尾道市生まれ
1986年 3月 岡山大学大学院工学研究科 修了
1986年 4月 水資源開発公団(現・水資源機構) 入社
1990年10月 筑後川下流用水建設所
1994年 4月 九州農政局計画部 出向
1996年 4月 水資源開発公団試験研究所
1999年 5月 利根導水総合事業所 調査設計課長
2002年 4月 愛知用水総合事業部 武豊支所長
2005年 4月 池田総合管理所 副所長
2007年 4月 吉野川局 施設管理課長
2009年10月 技術管理室 技術管理課長
2012年10月 豊川用水総合事業部 次長
2016年10月 香川用水管理所長
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