デザインの力で四国に愛される会社に

JR四国 鉄道事業本部 お客様サービス推進室 松岡 哲也さん

Interview

2016.08.18

「四国まんなか千年ものがたり」の自作模型を手に。窓外の景色まで貼り付けている

「四国まんなか千年ものがたり」の自作模型を手に。窓外の景色まで貼り付けている

全国的なブームが続く観光列車。有名デザイナーが手掛けるものも多い中、限られた予算で四国オリジナルの可能性を追求しているのがJR四国鉄道事業本部の松岡さん。「8600系特急電車」、観光列車「伊予灘ものがたり」を経て現在は2017年4月デビューの列車「四国まんなか千年ものがたり」のデザインに全力を注いでいる。

冒険した「8600系特急電車」

8600系特急電車

8600系特急電車

訪れる人、旅立つ人が必ず立ち寄る駅は街の顔。その仕事に関わりたいと、入社後は駅舎を設計する建築デザイン部門の業務に就く。その後、高松―松山間を走る8600系特急電車を造る際、車両専門家とは違う視点でアイデアを求められチームに加わったことが転機となった。以来車両デザインを手掛けるようになる。列車としての安全性や耐久性を考慮した上でデザインする難しさもあるが、じゅうたんや椅子一つにしても使える部品が圧倒的に少ないという点が建物設計とは大きく異なる。「流通品を使いながら色や組み合わせでどう変化をつけるかが悩みでもあり、おもしろい部分でもあります」
手掛けた特急列車は連結部分があるため、羊かんのような四角い車体にすることが多いところをあえて丸い形にと提案。メーカーもスタッフも悩みながら愛媛のみかんを思わせるオレンジ色と香川をイメージしたグリーンを合わせた車両が誕生した。メーカーからではなくJR四国がデザインを提案することで、前面の丸い窓という冒険ができた。「同じフロアにいる車両専門スタッフや社長とコミュニケーションしながらアイデアを練る。四国のことや会社のことを知る社内のデザイナーだからこそ、四国オリジナルを作れる可能性があると思います」

地元の人と手を振り合う「伊予灘ものがたり」

高校の時は登山部。 2年前に登った富山県の劔岳にて

高校の時は登山部。
2年前に登った富山県の劔岳にて

一人でふらっと旅行するのも好きだと言う。専門である「建築」目的で出かけるが、結局地元の人と話をしたことの方が心に残っている。そんな旅の醍醐味を表現したのが観光列車「伊予灘ものがたり」だ。最近の観光列車は、ほかのお客さんと視線が合わないよう半個室にすることも多い。だが、あえて椅子をレストランにあるような明るい色合いを選び背もたれも低いものにした。これが思わぬ結果を引き起こした。

「おもしろいデザインの列車が通るからと、狸が住み付いたエピソードがある五郎駅では近所の理髪店店主が"狸駅長"として出迎えたり、大洲城から旗を振ってくれたり。そのたびに車内は一体となって盛り上がるんです。半個室にしていたらそうはならなかったと思います」

古民家をイメージ「四国まんなか千年ものがたり」

デザインする時は、列車がどんな風景の中を走るかに思いをはせる。それは、車両も街の景色の一部だと考えるからだ。多度津―大歩危間を走る「四国まんなか千年ものがたり」のハイライトは大歩危の景色。だが、早朝に趣味の自転車で走る時に見る海岸や里山といった何気ない香川の風景の美しさも列車に乗る人に知ってほしいと考えている。

そのためにはまず「乗ってみたいと思わせるのがデザインの役割。あと、うちの会社は硬いイメージでしょう?それを何とか変えられたら」。列車も駅舎も会社も、地元の人に愛されることが何よりも大切だと思う。そんな信念を持ち、今取り組んでいる列車は古民家をイメージしている。車両の外観は四季を表現、天井は鏡張り・・・試行錯誤の日々が続く。
来春スタート「四国デスティネーションキャンペーン」に 合わせたJR四国のキャラクターも松岡さんが携わった

来春スタート「四国デスティネーションキャンペーン」に
合わせたJR四国のキャラクターも松岡さんが携わった

松岡 哲也 | まつおか てつや

略歴
1968年 9月 愛媛県生まれ
1991年 3月 鹿児島大学工学部建築学科 卒業
1991年 4月 四国旅客鉄道株式会社 入社
1998年12月 高松港頭地区開発推進室
2001年 6月 工務部工事課
2008年 4月 高松機械建築区 助役
2011年12月 営業部業務課デザインプロジェクト
2012年 4月 お客様サービス推進室デザインプロジェクト

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