人件費上昇が収益悪化を加速

2018年倒産企業の財務データ分析調査 東京商工リサーチ

Research

2019.03.07

2018年(1~12月)に倒産した企業のうち、最新期での減収は60.9%に達し、生存企業の47.1%を13.8ポイント上回った。加えて、深刻な人手不足で上昇した人件費が収益を圧迫、当期利益黒字は生存企業の78.0%に対して倒産企業は47.7%にとどまり、収益格差が鮮明になった。

※本調査は、18年の倒産企業のうち、東京商工リサーチの財務情報から3期連続で財務データのあった463社(個人企業を含む)と、生存企業34万7,424社の財務データを比較、検証した。最新決算期は18年1~12月期まで。

6割が最新期に「減収」

18年に倒産した463社の最新期の売上高合計は、3,375億5,536万円(前期比6.4%減)だった。このうち、「増収」は181社(構成比39.0%)に対し、「減収」は282社(同60.9%)と6割を占め、売上不振から抜け出せない企業が倒産しやすいことを裏付けた。一方で、生存企業34万7,424社のうち、「増収」は18万3,586社(同52.8%)と過半数を占めた。

赤字企業率 倒産52.2%

赤字企業率(当期純損失の企業数の比率)は、倒産した463社のうち、242社(構成比52.2%)と半数を超えた。一方、生存企業は34万7,424社のうち、7万6,423社(同22.0%)にとどまり、収益力の格差が浮かび上がった。

倒産した企業の赤字企業率は、前々期40.3%→前期41.9%→最新期52.2%と急激な業績悪化を招いている。一方、生存企業の赤字企業率は前々期21.5%→前期21.9%→最新期22.0%と、対照的にほぼ横ばいで推移している。

人件費率 破たん前に上昇

倒産企業の人件費(給料手当、役員報酬)は、前々期128億2,578万円→前期124億5,933万円→最新期127億6,766万円とほぼ横ばいだったが、売上高人件費率(売上高に対する人件費の割合)は、前々期10.8%→前期12.7%→最新期15.3%と年々上昇していた。ぎりぎりに圧縮した人件費も限界に達した一方で、売上高が減少し、収益悪化から赤字に陥るプロセスがみえてくる。一方、生存企業は、前々期14.7%→前期14.3%→最新期15.4%と、倒産企業とほぼ同じ水準だった。増収基調にあるため、賃金引き上げの実施も収益内で吸収できる範囲であることを示している。
2012年12月から始まった今回の景気拡大は、戦後最長を更新する可能性が高まっている。だが、その恩恵に浴せない中小企業は少なくない。業績が不安定な状態で、深刻な人手不足を補う人員確保がコストアップを招き、収益悪化につながるケースが少なくない。今後は、収益力を高める競争力の有無が事業継続できるかどうかの分岐点に浮上している。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花正伸

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