300年続くオリーブ王国をつくる

小豆島ヘルシーランド 社長 柳生 敏宏さん

Interview

2019.03.07

2011年にスペインから移植した「樹齢千年のオリーヴ大樹」。 小豆島のシンボルになっている=土庄町の小豆島ヘルシーランド・オリーヴの森EAST

2011年にスペインから移植した「樹齢千年のオリーヴ大樹」。
小豆島のシンボルになっている=土庄町の小豆島ヘルシーランド・オリーヴの森EAST

可能性は無限大

「オリーブ王に俺はなる!」

人気マンガ「ワンピース」の主人公さながらに、こう宣言するのは小豆島ヘルシーランドの2代目社長、柳生敏宏さん(41)だ。「オリーブの可能性は無限大。心と体の健康をオリーブで追求していきたいと思っています」

小豆島ヘルシーランドは、柳生さんの父・好彦さんが1985年に創業。農園をはじめ、オリーブを原料にした化粧品や健康食品の開発・製造・販売を手掛けている。看板商品は年間12万本以上を売り上げる美容化粧品「ジ・オリーヴオイル」。独自の特許技術「乳酸微発酵」を活用して搾油。肌の保湿と保護に加え、フルーティーな甘い香りで「お客さんからは『翌朝には違いが分かる』とうれしい感想をいただいています」
看板商品の「ジ・オリーヴオイル」シリーズ

看板商品の「ジ・オリーヴオイル」シリーズ

今開発に力を入れているのは、オリーブの「葉っぱ」からつくる健康ドリンクだ。オリーブの葉は抗酸化作用の高い成分が豊富で、こちらも独自の特殊な製法でエキスを取り出す。「葉っぱ専用の畑もつくりました。実は採らないので通常よりも木を密集させて栽培することが可能で、育てる手間も軽減できます」

商品は自社サイトによる通信販売がメインで、現在会員数は全国に36万人。「200万人を目指したい」と柳生さんは意気込む。「どこの家庭にも調味料や置き薬があるように、『困った時はオリーブに聞け!』というくらいの欠かせない存在にしたい。一人でも多くの人に、オリーブの魅力をもっと知ってほしい」

「孤独を楽しめ」

オリーブを家庭に欠かせない存在に

オリーブを家庭に欠かせない存在に

オリーブ愛を熱く語る柳生さんだが「実は、私も最初はオリーブの魅力に気づいていなかったんです」

小豆島で生まれ育ち、大学卒業後は大阪の金属加工会社に勤めたが、24歳の時、父に呼び戻される形で家業に就いた。だが「正直、どんな会社なのかもよく知らず、仕事に身も入っていませんでした……」

ある日、会社の事務所で一本の電話を受けた。通信販売の商品を購入している女性客からだった。

「この商品、本当にいいのよ。こんないいものをつくってくれてありがとう。これからもつくり続けてね」

体に衝撃が走った。「うちの会社はいいものをつくっているんだ、オリーブはこんなに魅力があるんだ、と初めて知りました。生涯をかけていい商品をつくっていきたい、『ありがとう』を積み重ねていく仕事がしたい。人生の目標が定まった瞬間でしたね」

28歳の時、工場視察で訪れていた北海道で、一緒だった父に言われた。「社長をやるか?この出張が終わるまでに考えておけ」。その夜は一睡もできなかった。「自分にできるのかという不安しかなかった。でも、やるしかないと思いました」。覚悟を決めた柳生さんに父は、こう声をかけた。「孤独を楽しめ」

父は何を伝えたかったのか。最近になって、ようやく分かりかけてきたと話す。「自分自身をコントロールする力を養え、ということかなと思うんです。周りに振り回されて立ち位置をコロコロ変えるのではなく、渦の真ん中に一人でしっかり立って見極めていく。父の言葉の重みを今改めて感じています」

社長になった時、先が見通せるようにと願をかけて、コンタクトからメガネに変えたんですよ、と柳生さんは笑顔で当時を懐かしむ。

300年先もオリーブを

「オリーブが病気にならないか、台風が来ないか、心配になって夜眠れないことも多いです」。以前は商品の製品化までを他社に委ね、小売をメインにしていた。だが、柳生さんが社長になって以降、本格的にオリーブの栽培から手掛けるようになった。「手摘みも搾油も全部自分たちでやろうと。製造工場も立ち上げました」

15年前に80本からスタートしたオリーブ栽培。自社農園「オリーヴの森」は今では8.6ha、2100本にまで広がった。柳生さんの一番好きな場所のひとつだ。「坂道を上がった瞬間にオリーブ畑と瀬戸内海が広がり、水面がキラッと光る。嫌なことも一瞬で忘れられます」
自社農園「オリーブの森」

自社農園「オリーブの森」

古い町並みを迷路に見立てた遊び心で観光客をもてなす「MeiPAM(メイパム)」事業や、明治時代の呉服店の蔵を改装したアートギャラリーの運営など、地域磨きにも力を注ぐ。「島の人口は、私がUターンした頃から4000人減りました。大好きな小豆島を盛り上げたい。私たち若い世代がもっと頑張らないといけません」。今後は「オリーヴの森」に宿泊施設などを設け、観光に来てもらえる場所に成長させたいと、熱い思いを語る。

以前イタリアで、樹齢300年のオリーブが樹海のように広がっているのを見て、心が震えた。その時「300年続くオリーブの森をつくりたい」という壮大な夢が芽生えたという。「300年先にもオリーブが受け継がれているということは、町や島も在り続けているということ。オリーブの力で島の人たちが健康に、豊かに暮らしている。そんな未来に少しでも貢献できればと思っています」

篠原 正樹

柳生 敏宏 | やぎゅう としひろ

略歴
1978年 小豆郡土庄町生まれ
1996年 香川県立土庄高校商業科 卒業
2000年 城西国際大学経営情報学部 卒業
     西原金属 入社
2002年 小豆島ヘルシーランド 入社
2004年 取締役
2005年 取締役副社長
2006年 代表取締役社長

小豆島ヘルシーランド株式会社

住所
香川県小豆郡土庄町甲2721-1
代表電話番号
0879-62-7111
設立
1985年10月19日
社員数
約120人
事業内容
事業内容
オリーブ化粧品の開発・製造・販売、オリーブ健康食品の開発・製造・販売、オリーブ・小豆島・瀬戸内関連の食品開発・製造・販売、オリーブ機能性研究(オリーヴ健康科学研究所)、オリーブ栽培

地域事業
MeiPAM小豆島・迷路のまちアートプロジェクトの共同運営、地域活性化事業の企画・推進・運営 他

グループ会社
合資会社柳生商店、日本ヘルシーランド株式会社、合名会社童の夢、豊島オリヴアルス株式会社、株式会社瀬戸内人、直島オリーヴ株式会社
資本金
9,995万円
地図
URL
https://www.healthyolive.com/
確認日
2019.03.01

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