分からないものを解明し 新しいもの創り出したい

香川県赤十字血液センター 所長 本田 豊彦さん

Interview

2012.05.17

1969年、アポロ11号によって人類が初めて月面に到達した。当時、小学生だった本田少年は、天文好きな同級生たちと一緒に香川大学の天文台へ通い、星を観察した。しかし、本音は違っていた。

本音は星よりもロケット

「実は星には興味がなかったんです。ロケットの方が好きだったんですよ」。ロケットや人工衛星はどうやって作られているんだろう・・・。「ロケットを作りたい」と思った。しかし、「当時、ロケットや人工衛星を作っている大学がなかったんですよ。あれば、そちらへ進んだかもしれないですね」。本田さんは医療の道を選んだ。

故郷の役に立てるなら

京都大学医学部へ進学。放射線・核医学科消化器グループで、当時まだ解析が進んでいなかった膵臓(すいぞう)の消化機能について研究した。

「分からないものを解明したい、新しいものを開発したい、という思いは常にありましたね」

消化に必要な膵液(すいえき)分泌はどのようにコントロールされているのか。アメリカにも渡り、国立衛生研究所(NIH)で膵外分泌機能の研究に没頭した。その後京都大学病院に戻り、放射線・核医学科で勤務していた頃、白羽の矢が立った。

「高松赤十字病院の消化器内科を大きくしたい。来てくれないか」

「新しいもの」を求めて、研究職一筋だった。高松赤十字病院だと、おそらく臨床(患者への診察や治療)が主になる。悩んだ末、答えを出した。

「思い切って高松に帰って臨床をしようと。少しでも故郷の役に立てるならって思いました。人生のターニングポイントでしたね」

針刺さずに献血

現在は香川県赤十字血液センターで献血の推進などに力を注いでいる。香川の献血者数は20年前の約半分。特に10~20歳代が減っているそうだ。

献血をするには、貧血の程度を調べるためにまず血液検査をし、その後採血。つまり献血者に2回注射針を刺さねばならない。本田さんは献血者の負担を減らすために、近赤外線で血液中のヘモグロビンの量を測定することで、針を刺さなくても貧血の程度が分かる新たな機器の本格導入を進めている。これだと注射針を刺す回数が1回にできる。さらに、「1回も針を刺さずに献血できるやり方があるんじゃないかと思うんです。こんなことを考える人はいないかもしれないですけど」

「新しいもの」。常に意識はそこにある。

月へ行く夢 今も

パソコンのメモリーやCPUなどの部品を集めて、一から組み立てるのが趣味だという。「最近はすぐ新しいものが出るし、規格もメーカーごとにバラバラだし…困るんですよ」と愚痴る本田さんだが、「失敗したりうまくいったり、作っている過程がおもしろいですよね」と少年のような瞳で話す。

ロケットを作りたいと夢見た少年は、医療の道の最先端を進んだ。そして―「今でも月へ行ってみたいって本気で思っているんですよ」。また、本田さんの瞳が少年のように輝いた。

本田 豊彦 | ほんだ とよひこ

略歴
1953年 3月23日 高松市生まれ
1979年 3月 京都大学医学部 卒業
1979年 6月 大阪逓信病院 勤務
1988年 3月 京都大学大学院医学研究科博士課程 修了
1988年 4月 京都大学医学部附属病院 勤務
1996年 7月 高松赤十字病院 勤務
2007年 4月 香川県赤十字血液センター 副所長
2009年 4月 香川県赤十字血液センター 所長

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