「ためらい」「怖さ」を吹っ切って 一歩、前に出る

四国管区警察局長 警視監 石田 倫敏さん

Interview

2012.02.02

四国4県の警察を取りまとめる四国管区警察局。そのトップの語り口は柔らかく、表情はとても穏やかだ。

「父親が税務署に勤めていたので、公務員になろうという漠然とした思いは子どもの頃からありました。中でも、国民の暮らしを直接守るのが警察。より国や人に尽くせると思ったんです」

まずは現場へ!

これまでに、刑事、公安、警務、薬物やテロ対策など、数々の部署を経験。ここ数年は、皇室の安全を確保する警衛、VIPの警備、機動隊の運用など主に警備畑を進み、安全・安心を守ってきた。

常に自分自身の「原則」としてきたことがある。「現場第一主義」だ。

「現場がなければ警察の仕事なんてありえないですから。机の上で考えるんじゃなく、現場を見て、感じて、何をすべきか考える。それが一番大事なんですよね」

テクニックよりも・・・

中学の頃は剣道に打ち込んだ。「今の時期だと、やっぱり寒稽古が辛かったです。自分でもよくやったなぁと思いますね。でも、全然強くならなかったです」

「剣道で学んだこと?当時は考えもしなかったですね」と石田さんは笑う。

「こう行ったら打たれるんじゃないか、かわされるんじゃないか、突かれるんじゃないか…。いろいろ考えるんですが、それでも前に出なきゃ勝てないのが剣道なんです。ためらいや怖さを吹っ切って、一歩出る。前へ出ていく。それが剣道の醍醐味ですよね」

相手と対峙した時の身構え、気構え。警察という仕事に就き、改めて気付かされた。「精神的に鍛えられた部分が大きいですね。もちろん稽古を積んでテクニックを身につけていくことも大切ですが、それはある程度レベルが上の人の話ですね(笑)」

今は五分五分です

双子の息子さんが小学生の頃、将棋を教えた。当時、小学校ではやっていたこともあり、「もっと強くなりたい」と言うので、一緒に将棋道場に通い始めた。毎週土曜の約2時間。最初の1時間は詰将棋のプリントを黙々と解いて基本を学び、後の1時間は実戦を繰り返す。

「将棋はいろいろな指し方があって、相手によって対応を変えないといけません。複雑で、柔軟性や集中力が養われますね。子どもからお年寄りまで、年齢に関係なく誰とやっても楽しめるのもいいですよね」。その後、息子さんとの対局はどうなりました?「そうですね…。道場に通い始めて2カ月ほどでまったく勝てなくなりました。子どもはあっという間に強くなりますね」

盆や正月に家族で集まると、今も自然と将棋を指すそうだ。「このところの勝敗は五分五分ですかね。最近は彼らもやっていないので、腕が落ちてるみたいですよ」

お互いに近況を報告しながらの対局。至福のひとときだ。

現場へ、前へ

対岸の岡山・笠岡市の生まれだが、これまで四国とは縁がなかった。初めての四国での暮らし。「どんな人でも受け入れてくれる懐の深さを感じる」と、すっかり気に入った様子だ。

近い将来、発生が予想される南海・東南海地震への備え。去年全国でも四国が突出して増加した交通死亡事故対策。懸念事項は多いが、「基本に忠実でありたい」と力を込める。

「自分がこれをやるべきだと判断したら、何が何でもやり通す。その決断力、実行力がなかったら、仕事は前に進みませんからね」

現場に出る。そして、一歩、前に出る。そこに、石田さんの基本がある。

石田 倫敏 | いしだ みちとし

略歴
1955年11月11日 岡山県笠岡市生まれ
1979年 3月 東京大学法学部 卒業
1979年 4月 警察庁 入庁
1986年 2月 千葉県警千葉南署長
1988年 8月 警視庁第二機動隊長
1991年 7月 北海道警刑事部長
1998年 3月 大阪府警警備部長
2000年 8月 島根県警本部長
2003年 1月 警察庁警備課長
2004年 4月 警視庁警備部長
2006年 4月 山口県警本部長
2008年 5月 科学警察研究所副所長
2011年10月 四国管区警察局長

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