
これまでに印刷物欠点検査のための装置や、バイオ苗生産装置などをつくり上げてきた。中でも鍵や宝石、書類など貴重品を一括管理するシステムは、個人情報の保護や防犯が重要視される今、注目を集めている。
下請けからの脱却

「操業後、社員それぞれの心に、自社製品がほしいという気持ちがあり、『下請けからの脱却』を目指して、新製品開発に取り組んできました。基礎があるから開発もできるんです」と話すのは、常務取締役の岡田博さん。配電盤や制御盤といった受注品の製造に加えて、95年から自社のオリジナル製品の開発を始めた。
最初に取り掛かったのは、印刷物の不良箇所を検査するための「枚葉印刷欠点検査用搬送装置」だ。「エアー吸着ドラム」の開発で、1時間当たりの紙送り量を増やし、検査の効率化に成功。98年に初号機を出荷した。これを機に、機械の運転や制御などにコンピューターを導入し、高性能化や自動化、省力化を図る「メカトロニクス」の分野へ。
最大657点を一括管理

宝田電産が考案したのは、貴重品管理システム「SPrison(スプリゾン)」。収納用の小箱を数列配置し、箱ごとに施錠・開錠機能を設けた。タッチパネル部分に個人番号と暗証番号を入力すると、制御部の個人データと照合され、必要な小箱の開け閉めができる。内部のシステムメモリーに取り出しと返却の記録が残るため、「いつ、誰が操作したか」の管理が可能に。
内蔵バッテリーの標準搭載で、停電時でも操作できる。52点から最大657点まで貴重品の一括管理ができ、鍵のみならず、宝石や薬品、文書などあらゆる種類のものに対応する。小箱の中にものが入っているかどうかは、機械が質量や厚みで感知。一般的にものを感知する仕組みには、センサーが使われることが多いが、機械であれば、同様のコストで寿命が長い。「薬品だと、残量まで分かりますよ」と岡田さん。
標準のシステムに加えて、オプション機能も充実している。本体とパソコンをLANで接続し、遠隔監視、管理。開錠・施錠の際の個人番号入力を、磁気カードや指紋での認証に変更することも。小箱の寸法や材質もユーザーの要望に応えられる。使用目的に合わせて、オーダーできるのが利点だ。
産学官でロボット開発
開発したのは「バイオ苗生産装置」。柔らかい新芽も機械でつかむことができる。成果が認められ、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」に採択された。
「柔らかいものを機械でつかむ技術は、布の取り扱いにも応用できそうです」。積み重ねてきた技術は、とどまることなく進化を続けていく。
宝田クオリティ
トップの方針により現在、社内各部門の代表者が集まり、ISO9001からヒントを得てオリジナルの「TQMS(宝田クオリティマネジメントシステム)」を構築中だ。「生き残っていくには、変化に耐えられる会社づくりが必要です。30年間の技術を引き継ぎ『人財』を育てる。仕事がどれだけ社会に貢献できているかを、問い続けていきたいですね」
TQMSは、来年からの運用を目指す。宝田電産は、昨年末上海で新会社を設立した。グローバル化も視野に入れ、さらなる高みを目指して新たなスタートを切る。
岡田 博
宝田電産株式会社
- 住所
- 香川県三豊市財田町財田上1335番17
- 代表電話番号
- 0875-67-3125
- 設立
- 1940年
- 社員数
- 83人
- 事業内容
- 各種配電盤、制御盤製作及び現地調整、枚葉印刷物の欠点検査用搬送装置製作及び現地調整、貴重品管理システム製作及び現地調整、産業用ロボット部品製作・据付工事及び搬送システムの保守
- 沿革
- 1940年 石田金属工業所 創設
1950年 石田金属工業株式会社
(現・石田エンジニアリング株式会社) 設立
1980年 丸亀出張所 開設
1981年 丸亀出張所を統合し、財田工場 発足
1983年 石田金属工業株式会社より分離独立
宝田電産株式会社 設立
2011年 上海に合弁会社 上海宝貴電気設備有限公司 設立 - 地図
- 確認日
- 2012.02.16
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