しかし、注目すべきはインターネット上でのビジネス、ウェブショップ大手「楽天市場」で月商3000万円以上を売り上げている点だ。ベッド販売とインターネット。一見ミスマッチに思えるこのビジネスを成功させた背景には、客との濃密なコミュニケーションとそのニーズに即座に答える行動力があった。
老舗4代目、新ビジネスへの決断
谷本さんは1869(明治2)年創業の漆器、家具店の4代目だった。しかし、業界のルールや慣習に縛られず、もっと自由にビジネスをしたいと新しい世界に踏み出す。
目指したのは、「チェーンストア」ビジネス。これまでの経験を生かした家具の関連業種で、日本にはないものを直輸入し多くの客に提供していきたいと考えた。この為に1996年アメリカに渡る。レンタカーを借りて1人で全米の家具店を巡った。飛び込みで店舗を見せて欲しいと交渉した。元々旅行が好きでバックパッカーとして世界中を歩いた谷本さんに抵抗はなかったそうだ。
そしてニューヨーク在住の友人を訪れた時、友人が谷本さんに言った一言「ベッド専門店をやれば」。 これが大きなヒントになった。アメリカでも「ベッド専門店」の歴史は「家具専門店チェーン」より浅く、日本にはもちろんない。そして人は必ず眠る。快適な睡眠を約束するベッドを提供できればいける。目標は決まった。
お客様の声を力に
そしてついに2000年、「ベッド&マットレス」1号店出店となったのである。
ただ、この「ベッド&マットレス」は海外の良質のベッドを提供しているだけではない。
1号店出店から行っているのがベッドを購入した客へのアンケートだ。日本人のベースはやはり布団。マットレスを置くベッドフレーム一つとっても、欧米ではマットレスの下にスプリング性のあるフレームを使うのに対し日本では通常スプリング性のない板やスノコを使う。そこでも寝心地が違ってくる。日本人がどのようなベッドを求めるのかユーザーの率直な声に耳を傾けた。
さらに「寝心地の保証」も始めた。この業界初の試みは、ベッドは買ったがどうも寝心地が良くない、自分には合わないという購入者に対して60日以内なら返品を受け付けるというシステムだ(現在、ウェブショップでは100日間に延長されている)。
こうした取り組みによって、そう度々買い換えるものではない商品「ベッド」を購入する消費者に安心感を与えた。結果、店舗数は4軒にまで増えた。
そして「ベッド&マットレス」は新たな市場へ踏み出す。ウェブショップへの展開だ。06年9月「ベッド&マットレス」は楽天市場店を開店させる。しかし、ベッドという商品は、消費者が実際に店に行って、触って、寝転がってみて選ぶもの、ウェブ上ではそのいずれもできない。そういう意味でウェブショップの中ではミスマッチな商品の一つに思える。
だが実際は、ウェブでの売上は9カ月後に月1000万円を超え、今年3月には3000万円を大きく上回り、「ベッド&マットレス」の全社売上の半分近くを占めるまで急成長した。
それでも、ウェブショップを開いた当時、谷本さんは客の商品に対する書き込みに正直、恐怖さえ覚えたという。「だって、自分が提供した商品に対するお客様の評価を他のお客様も見ることができるわけですよ」
ここで、これまで培ってきた「寝心地の保証」と「お客様の率直な意見に耳を傾ける」という姿勢が生きた。「届いた商品にキズがついていた」というクレームがあれば、商品を出荷した海外の取引先にまで出向き、梱包の仕方やコンテナへの積み込み方、さらには倉庫での保管の仕方まで調べる。そしてこの結果を客にフィードバックする。これまでと変わらない姿勢。これこそが急成長の原動力となった。
この店があってよかった
「お客さんは情報が欲しくて、専門家の話が聞きたいわけです。つまり知識のある所にお客さんは集まるんです」
それに加えて社長の考えていることを発信する。そうして客は社長の、その会社の考え方をわかった上で商品を選ぶ、こうして新しい信頼関係が構築されていくのだ。
最後に「ベッド&マットレス」が目指す会社の姿を聞いた。
「日本にはないようなものを紹介して、お客様に、この店があってよかったと思われたいですね」
谷本 善一
株式会社ベッドアンドマットレス
- 住所
- 香川県高松市亀田町47-2
- 代表電話番号
- 087-847-8800
- 設立
- 2000年
- 事業内容
- 高品質ベッドの開発・直輸入、販売
- 沿革
- 2000年 1月 創業
亀田店オープン(1号店)
2002年 3月 屋島店オープン
2003年12月 西宝町店オープン
2006年 9月 宇多津店オープン - 資本金
- 2000万円
- 地図
- URL
- http://www.rakuten.ne.jp/gold/bedandmat/
- 確認日
- 2009.10.15
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