楽しい「写真生活」を提案する“思いやりの通販企業”に―

ピクチャリングオンラインが扱っている商品は、売上の約6割を占めるデジタルカメラが約200種類。その他、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品が約3000種類。ホームページを開くと、最新モデルやおすすめ商品がずらりと並ぶ。そのネット通販を支えるのは高松市新田町にあるオフィス。電話やメールでの顧客とのやりとりは途絶えることなく、オフィス奥にある広大な倉庫では、山積みされたたくさんの商品が次々と目的地へと運び出されていく。

髙木さんは以前、写真プリントなどを行う「カメラのキタムラ」の現像所に勤務していた。そして15年ほど前から、店舗を運営しながら、写真のデジタル加工やネットサービスなどの新規事業に着手。2004年、キタムラのネット宅配・通販部門として、ピクチャリングオンラインの設立に至った。業界の激動の中を突き進んできた、と言えば聞こえはいいが･･････

「お客様から画像をメールで送ってもらって、グッズに加工して販売したりもしていました。まぁ･･････注文はなかったですね」。当時はまだ「ネットで買い物をする」こと自体、抵抗感が強かった、と髙木さんは振り返る。しかし、インフラの整備などネット環境が変わるに連れて状況も変わった。やがて訪れるデジカメブーム。時代を少し先回りする髙木さんのやり方に、周りが追いついてきた。

HPから注文を受け、商品を発送する「ネット通販」。基本的に顧客の「顔」は見えない。しかし、かつて「リアル」な店舗勤務を経験した髙木さんだからこそ感じることがある。それは「お客様は同じ人間。買い方が少し違うだけ」だということ。

「ネットショッピングが氾濫する今、私たちの店より安いところはいくらでもあります。その中で差別化していくのは『値段以外』の部分。安心と信頼感、スピード、商品知識、アフターサポート･･････買った後のお客さんにどんな提案ができるのかということに力点を置いています」

結婚式や家族旅行、子どもの運動会など、催しごとのアルバム作りを提案する「フォトブック」。オリジナルのポストカード作成や、デジカメの中で撮りっ放しになっている写真を簡単に整理する「リングファイルアルバム」･･････様々な「買った後」のサービスを提供している。

業界ではかつてプリント事業は年間6000億円市場といわれていた。しかし現在はその半分に満たない。大きな要因は、撮ったその場で写真が見れるデジカメの普及だ。そんな時代の変化に立ち会ってきたからこそ、思うことがある。「やっぱり写真っていいですよね。手にすぐ取れる手軽さ。静止画だからこそ、その一瞬が輝き、思いや情景までもがよみがえってくる。アルバムを広げるとコミュニケーションも広がっていきますよね」。そしてこうつけ加える。「カメラ屋さんではなく、いつまでも写真屋さんでいたいんです」

ピクチャリングオンラインでは、商品が到着して3〜4日後にメールを送る。「配送に問題はありませんでしたか？」。そして商品を使い出したと思われる2週間後には「調子はどうですか？　お困りごとはありませんか？」。さらに1年後の商品の保証が切れる1カ月前に「そろそろ保証が切れますが、商品に問題はないですか？」。

「いまだに根強いネット販売の『売って終わり』感を払拭させたいんです。保証が切れた後じゃなく、切れる前に連絡すると、お客様は『こんな案内はもらったことがない』とびっくりされるとともに、すごく感謝していただけます」。顧客からの問い合わせに応じるオフィスのコールセンターは壁を作らず1フロアにし、敢えてそのやりとりが他の従業員にも聞こえるようにしている。「顔は見えない。でも、いつもお客様のそばにいる」―。オフィスでは確かに、顧客の体温を感じることができる。

「お客様はデジカメを『買う』のが目的じゃないですよね。思い出を残したい、いい景色を残したい･･････私たちが焦点を合わせるのはそこなんですよね」

2年前から始めた家電製品のネット通販。宅配業者と連携し、商品の設置や接続、細やかなアフターサービスなど、やはり「値段以外」での強化に努めている。

今後はギフトサービスなども充実させ、将来は思い出づくりをコアとした「お客様のライフスタイルを提案」できる企業になりたい―。髙木さんはいつも少しだけ先回りして、フォーカスを合わせてシャッターチャンスを狙っている。