誇れる、優れた素材と確かな技術力。「庵治石」ブランドの確立めざし、男たちが立ち上がった。

第1回庵治石グランドコンペティション
A.S.G.C 2009実行委員会(あじストーンフェア2009内で実施)

Interview

2009.05.21

墓石の中でも、品質の素晴らしさで際立つ存在の「庵治石」。石材産地として650年以上続くその歴史を支えてきたのは、素材はもちろん、職人の技の確かさだ。今年6月に開かれる「第1回庵治石グランドコンペティションA.S.G.C 2009」では、評価に物理的・光学的な検査も加えて、今年度の庵治石製品No.1を決定するという。ものづくりに携わる技術者の心意気が感じられるこの催し。企画し、実現させた実行委員のみなさんに話を聞いた。

構成する鉱物一つひとつが、世界に類のない石を形成~庵治石

石材の日本三大産地の一つ、高松市の庵治・牟礼地区。茨城県の真壁町、愛知県の岡崎市と並び、良質の花崗岩の産地として知られている地域だ。石の積み出し港が庵治にあったことから、「庵治石」と呼ばれるようになったという。

庵治石は、石英と長石を主成分に、少量の黒雲母と角閃石を含む硬い岩石で、石を構成する鉱物の一つひとつの結晶が極めて小さいうえに、結合が緻密なことが特徴だという。「他の地域で産出される花崗岩に比べると、庵治石は硬く、それでいて粘りがある。複雑な造形を施しても角がこぼれにくいから、美しく加工することができるんです」と実行委員長の太田昭二さんは語る。硬さがあるために水を含みにくく、風化や変質にも強い特色を生む。墓標に刻み込んだ文字や色が変化・変色しにくく、後世まで残るのである。

なかでも庵治石の最大の特徴が、庵治石のみに見ることのできる「斑」といわれる模様だ。石のまだらな地模様に浮かび上がる絣のような模様は、自然が創り出した偶然のもので、不規則な間隔で浮かび上がる。実行委員の1人田渕康光さんは、「研磨することで石の表面には奥行きのあるつやが出て、美しい模様が浮き上がります。他産地の人工的な模様に比べると、庵治石の美しさは際だちます」。

石の持つ魅力を引き出す、高い技術力

とはいえ、全国的に見ると、庵治石の知名度もまだまだという。「石材業界の中でこそ浸透しているものの、一般的な手応えは正直なところもどかしい。ブランドとして確立されているとは言いにくいですね」と実行委員の太田清登さん。今回、コンペティション=品評会の企画があがったのも、庵治石を日本全国の人々が知るほどの全国的なブランドにしたいとの願いからで、自ら発信していく必要性を強く感じたためだ。
品質の良さと希少価値で、庵治石は高価なものになる。最大の特徴の美しい斑は自然が創り出すもので、模様の入り方は不規則。当然カッティングも難しい。すべての石が製品にはできず、墓石にならない石も出る。加工が難しい石だからこそ生かされるのが職人の技術力だ。原石から美しさを導き出す技。650年間続く産地を支えられたのは、昔から伝承されてきた技の高さがあったからといえる。

今回のコンペティションでは見た目の美しさだけでなく、その技術力を香川県産業技術センターによる7項目の物理的・光学的な測定、寸法精度などの8項目をふまえて審査される。「美しさという感覚的なものだけではない、誰もが納得できる数値的な基準。高度な審査をクリアした、だれもが認める2009年最高の庵治石製品を決め、庵治石の存在を世の中に出していきたいですね」と同じく実行委員の髙橋省司さんは語る。 石材を巡る状況は明るい材料ばかりではない。石材加工従事者は年々減少傾向にあるという。また安価な労働力が得られる外国で、外国産花崗岩を原料に作った輸入製品の国内流通も事実のことだ。

「今回、たくさんの人に会場に足を運んでほしいと思っていますね。庵治石の存在感を高めることは第一ですが、こんな元気なことをしている業界の存在をアピールしたい。若い人の就業にもつなげたいですし」と、太田清登さんは期待を込める。

庵治石の墓石、2009年No.1が決まるのは6月13日。全国発信の第一歩となる日になりそうだ。

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