
看板の大きさと評判の関係は興味深い。4年前に新築した高松市番町のまなべ眼科クリニックは目立たない看板が一つあるだけで堅苦しい建物が診療所らしくないが、院長の眞鍋洋一さん(51)は、日帰り白内障手術の専門医で年間約700例の手術をこなす。
1996年、東京の聖路加国際病院を辞めて、36歳のとき、いわゆる落下傘開業した。高松での診療実績は皆無だった。
最初に開業した場所は高松市扇町。半径1キロ以内に香川県立中央病院、高松赤十字病院、高松市民病院を含め8つの眼科があった。銀行に経営が成り立たないといわれ、融資を受けるのにも、ひと苦労した。
許される誤差0.1ミリ以下

手術は黒目の部分の角膜を切り、超音波装置で水晶体を吸い出し、水晶体が入っていた袋に眼内レンズを固定する。傷口は2.4ミリ。縫わなくてもいいように切開する。手術時間自体は10分ほどで終わる。
局所麻酔をする。人によっては目が動く。許される誤差は0.1ミリ以下……慎重に、丁寧に、素早く、メスを入れる。一瞬たりとも気が抜けない。
香川初、入院施設ない専門眼科
2年後、年間の手術数が200例を超えて、診療所が手狭になり高松市六条町に移転した。
20年の賃貸契約で、地主に敷地300坪(約1000平方メートル)に130坪(約430平方メートル)の医院を建ててもらった。
欠陥があった。一番大事な手術室の床が歩くと揺れた。床下に医療機器のケーブル類を通すための支柱が木製だったのが原因だった。10年我慢したが家賃を上げると言われ契約を破棄して、2008年に高松市番町3丁目に現在の診療所を建設した。
病院らしくない医院の建物
コンセプトは目立たない診療所らしくない建物だ。「どこの医療機関も、来やすい病院を目指しますが、ほとんどの患者さんは口コミで病院を選びます」
左右対称の重厚な建物が病院らしくない。看板が一つあるだけ。隠れ家のようで分かりにくい。初めのうち、タクシーの運転手でも探すのに困ったそうだ。
緊張解く看護師の温かい手
外観のいかめしさと内部の居心地の良さの意外性。そして院長やスタッフの笑顔。予想外の仕掛けが、患者に安心と信頼感をもたらす。
手術室に人形が置いてある。「上を向いた無防備な姿勢の患者さんに、お腹の上で人形を抱いてもらい、看護師が手を添えてあげます」
人形と手の温もりの不思議な作用で、患者の緊張が和らぐ。
徹底した患者目線の医院づくり。ノウハウを知ろうと、多くの医師や建築家が全国各地から視察に訪れる。
臨床現場で医療サービス学ぶ
「大学では専門知識は学べますが、サービス業としての医療は教えてくれません。手早い診察で病状を的確に判断して、大勢の患者さんに満足してもらうのは大変です」
大学を離れ臨床の現場で多くを学んだ。いろんな病院へ見学に行き学会に出席して、新しい医療情報を集め、ジャンルを超えた専門医と人脈を広げた。
人形も、ある病院で近視手術の例を見て取り入れた。
顕微鏡手術、55歳で引退予定

▲木目調のクリニック内部。居心地よくつくられ、診療所らしくない
▲クリニックの建物は外から見ると、誰も眼科診療所とは気づかない=いずれも高松市番町3丁目で
◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮
「顕微鏡を使う白内障の手術をする眼科医は、外科医より寿命は長いのですが、いつまでもやれません。県内でやめた先生が、最近の数年で2人おられます」
手術は、火曜日の午後と木曜日の午前、手術日は準備も含め2時間で10例ずつ、週20例。1年50週使えるとして、1人でこなすのは1000例が限界だ。
手術は数をこなすと精度が上がる。が、合併症のリスクも大きくなる。
「55歳で引退するつもりです」。後を託せる若く優秀な眼科医を探しているが、まだ見つからない。
眞鍋 洋一 | まなべ よういち
- 1961年 高松市生まれ
1986年 埼玉医科大学卒業
1990年 埼玉医科大学大学院臨床医学研究科修了(眼科学)
丸山記念総合病院眼科
1991年 畠山眼科医院
1993年 栗原眼科病院
1994年 聖路加国際病院眼科
1996年 高松市扇町で開業
1999年 同市六条町に移転
2008年 同市番町に移転
2008~2010年 日本眼内レンズ屈折手術学会理事
2010年 日本眼科手術学会理事
- 写真
医療法人社団 明圭会 まなべ眼科クリニック
- 所在地
高松市番町3丁目20-2
TEL:087-816-5580- 診療時間(予約制)
- 休診
- 第2・4・5日曜日
土曜日
水曜日午後
祝日 - 確認日
- 2018.01.04
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