より深く広く 「本業のねじ」を!

サンコー 社長 河野 伸之さん

Interview

2014.01.16

「若気の至りでした。本業より大きくしようと意気込んだホームセンター事業は、5年かけても立て直せませんでした」

失敗から教訓を学んだ。昨年7月、3代目社長に就任した河野伸之さん(45)は、なにより大切なことは「本業を深く広く知る」ことだと気づいた。

精密機械からビルや瀬戸大橋など巨大構造物まで、あらゆる工業製品のかなめのねじ。その種類は数十万とも数百万ともいう。

今年5月、創業53年を迎えるサンコー(株)は、1千社の仕入れ先と5千社の供給先を持つ、四国で最大手のねじの商社でメーカーだ。

情報力と技術力で販路拡大

創業は1961年、高度成長時代の最盛期だった。農業資材会社のサラリーマンだった会長の河野祝之さん(77)が、通勤の道すがら、ねじ屋の店先に山積していたねじが、帰りにはほとんど無くなっていることに気付いた。業界の盛況を直感して、見よう見まねでねじ屋を始めた。

ねじ屋は家族経営から大手まで、特定業種のねじを扱うところは多いが、数十万種類を販売する会社は珍しいという。

経済規模の小さな四国で、限られた業種を対象にしても業績が上がらない。さまざまな業界に進出した。販路拡大を支えたのは、「商社」の情報収集・企画・市場開拓・流通機能と「メーカー」の技術力だ。

ものづくり一千社の情報

供給先の業種は、精密機械、家電、カメラ、携帯電話、情報通信、自動車、造船、工作機械、住宅、農機具、鉄鋼、橋梁、土木など広い分野に及ぶ。

ねじは日本工業規格(JIS)の既製品と、オーダーメードの特注品がある。既製品は3割ほどだ。

特注品は、顧客メーカーの図面を見て協力工場に発注する。仕入れ先はいろんな会社の仕事をするから、大手の顧客メーカーより技術が進んでいる場合がある。

「いつも新しい仕入れ先を探していますから、最適な製品を作れる工場を選べます」

顧客の求める品質とコストに合わせるため、開発段階で図面や材質の変更を提案することも多い。仕入れ先1千社のものづくり情報を持つ商社としての強みだ。

仕入れ先は海外にもある。顧客のニーズに沿った品質と価格を提供できる海外製品は、自社製造や国内仕入れと同じ検査をして、顧客に品質保証する。

海外からの仕入れ比率は、金額ベースで15%程度。海外拠点は、シンガポール、香港、上海、大連の4カ所で、外国人社員は本社を含めて20人いる。

海外との技術・コスト競争

自社製品は、技術もコストも海外に負けない。各種産業用の締結部品と周辺部品を社内で、マイクロメートル単位の精度を要する製品は、関連会社の葵機工が製造する。

自動車のエアバッグは化薬剤を使う。葵機工の「削る技術」は、化薬剤を詰める筒の加工面に微細な削り残り「バリ」を残さない。バリが残ると誤作動の恐れがある。

「お客さんは日本の主な化薬メーカーです。そこから自動車メーカーにエアバッグの主要部品を供給しています」

葵機工が開発した「予測管理技術」は徹底している。24時間工場を稼働した場合でも、製品のわずかな狂いも予測できるシステムだ。夜中に無人で稼働しても、不良品を出さないため、調整作業を昼間の勤務時間にやる方法だ。2交代制の必要がないから製造コストが下げられる。

「トップブランドの自動車や総合家電メーカーさんが、工場へ見学に来られました」。このシステムは、2012年、「ものづくり日本大賞優秀賞」と「芦原科学賞大賞」を同時に受賞した。

在庫管理がカギ

「ねじ屋は大きくなると潰れる」。河野さんが聞いた父・祝之さんの持論だ。特注品は、注文主の生産が終わると販売がストップする。販路の拡大で他に転売できない商品が増えて在庫回転率が下がり、資金繰りが行き詰まる。

「お客さんから、急に注文がくることもあるので、営業マンは在庫不足を恐れて大目に仕入れがちです」

顧客の生産情報をリアルタイムで把握する。多く製造したい仕入れ先の工場をコントロールする・・・・・・ねじ屋の営業マンにとって、必要なものを、必要なときに、必要な数量だけ調達する「ジャスト・イン・タイム」は難しい。

ねじよりホームセンター事業

ゴマ粒サイズもある各種用途のねじ

ゴマ粒サイズもある各種用途のねじ

子どもの頃、会社の2階が家だった。大学を出て百十四銀行に就職した。「いずれは会社を継ぐ」と思っていたが、ねじ事業への関心は薄かった。

「1989年、父がホームセンターを始めて、興味がわきました」。銀行をやめてホームセンターの大手、島忠(株)へ勤めた。配属された横浜店は全国でも有数の繁盛店で、仕事は面白かった。

2年後、サンコーに入社した。父も幹部も、小売り商売は初めてだった。

「自分ならやれる。ねじより大きな事業にしよう」。意気込んだ。「30歳でした。すべてを任せてくれない父と対立しました」

2004年、ホームセンターは同業者へ売却した。「本業に力を注いだ父は正しかった」。河野さんは笑顔で振り返る。

「主力のねじ事業は、私には経験も実績もありません。みんなの声に耳を傾け、風通しのいい組織をつくります」

100年企業への厳しい道を歩み始めた河野さんに戸惑いはない。

ホームセンター事業の挫折は、創業者が3代目に与えた試練だったかもしれない。・・・・・・「ねじ事業をもっと深く広く」と。

◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

河野 伸之 | こうの のぶゆき

1968年 高松市生まれ
1991年 同志社大学 卒業
    株式会社百十四銀行 入社
1996年 株式会社島忠 入社
1998年 サンコー株式会社 入社
2003年 取締役部長
2009年 常務取締役
2010年 代表取締役専務
2013年 代表取締役社長
写真
河野 伸之 | こうの のぶゆき

サンコー株式会社

所在地
高松市朝日新町20番4号
TEL:087-821-0035
FAX:087-821-0040
設立
1961年
代表者
代表取締役社長 河野 伸之
資本金
7000万円
従業員数
230人
営業所
香川、徳島、愛媛、高知、大阪、兵庫、岡山、広島、神奈川の各府県15営業所
海外拠点
サンコー・プレシジョン・シンガポール
讃高精密(香港)有限公司
賛高精密(上海)貿易有限公司
賛高精密(大連)貿易有限公司
関連企業

讃高仮設リース株式会社
葵機工株式会社
サンコースチール株式会社
瀬戸株式会社
讃高物産株式会社
確認日
2018.01.04

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