地震に強い屋根瓦を研究 軽量化に成功し未来開く

株式会社 請川窯業 代表取締役社長 請川 和英さん

Interview

2012.07.19

讃岐瓦

香川県は7世紀、藤原宮の造営時、大量の瓦を焼いた供給地の一つでした。江戸時代以降、三豊、観音寺地方に瓦を焼く窯がつくられ発展し、讃岐瓦となりました。阪神大震災で瓦を乗せた立派な屋根の家が倒壊し、瓦業界は逆風にさらされました。瓦製造業界は耐震性を強め台風にも負けない瓦づくりに取り組み、讃岐瓦は生き残りました。その先頭に立つのが請川窯業社長の請川和英さん(53)です。

ちょうどバブル経済が終わり、ただでさえ住宅の新築件数が落ち込んだときに阪神大震災が業界を直撃、その後2004年に列島を見舞った連続台風で、耐震と耐風の機能強化が大きな課題になった。瓦の軽量化と施工方法の改善に取り組んだ結果、重量は20%軽くでき、屋根に瓦をのせる並べ方は瓦同士ががっしり噛み合い動かなくする「パズル組み合わせ構造」と呼ばれる独自の防災瓦も開発、県下の地場産業の技術を向上させるため置かれている県産業技術センターのテストでトップレベルの成績をおさめた。瓦の素材となる土や焼き方を変えることで瓦を軽くする技術は、同センターと共同開発した屋根重量が半分となる社寺建築向けの「一体瓦」に結実した。

瓦屋根を葺くときの施工法にも問題はあった。戦前などに建てられた古い家屋ほど瓦を屋根にとめるのに大量の土を使った。屋根が重くなっていたのは、瓦の重量ではなく、多くが屋根の上に分厚く盛られた土に原因があった。今の瓦屋根は、すべて瓦を葺く屋根面に木組みされた骨組みをつくりステンレスくぎで固定する施工法になっている。新しい瓦と施工法が普及した段階で発生した東北大震災では、瓦屋根は揺れによく耐えた。
 請川窯業では、日本瓦の自社ブランド「瓦うけがわ」のほかに、洋瓦のブランド「ファンタジア」も開発、02年から発売した。こちらはイタリア人デザイナーに協力してもらい、色彩豊かな屋根にする瓦で、若い人に人気だ。「瓦屋根には日本人の心に訴える何かがある。日本から瓦屋根はなくならない」と請川さんは自信をもつ。

請川さんが今は会長職にある父の格さん(77)に「今日からお前が社長だ」と言われ跡を継いで社長になったのは38歳のとき。業務改善にはとにかく熱心だ。瓦を焼く設備を全面的にコンピューターで管理するラインにし、コスト削減に努めてきた。

古くからある瓦製造技術のことも忘れない。置物のような鬼瓦は陶芸技術と彫刻技術のかたまり。鬼師と呼ばれる職人を大切にして、未来の鬼師を目指す若者が技術を継承してゆく仕事も社業として取り組んでいる。

請川 和英 | うけがわ かずひで

株式会社 請川窯業

住所
香川県観音寺市木之郷町852-1
代表電話番号
087-527-6327
設立
1932年
地図

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