ともに学んで ともに成長して

香川県中小企業家同友会 女性委員会 委員長 フェリス 代表 林 希世視さん

Interview

2014.08.21

かつては専業主婦だった。15年ほど前、趣味の延長で友人と一緒に参加したカラーコーディネートのセミナーで、「色」が持つ魅力に惹かれた。主婦業の合間を縫って勉強し、個人事業主として、カラーセラピスト、カラーコーディネーターなどの仕事を始めた。

事業を大きくしたい、大きな利益を出したい、とは思わなかった。好きな仕事をやりたい。ただそれだけだった。しかし、事業はそう甘くはなかった。

「何をどういう風に考えていけばいいんだろう、何が良くて何が違うんだろう・・・・・・不安なことばかりでした」

今年4月、香川県中小企業家同友会の女性委員会委員長に就任したフェリス代表の林希世視さん(53)は、「迷っているならやってみればいい。一緒に経営を学んでいきましょう」と、起業を目指す女性たちにエールを送る。

無我夢中が一転、戸惑いに

最近の女性経営者には、エステティシャンや整体師など、民間で資格が取れる業種で開業するケースが多いそうだ。だが、「マーケティングはどうするのか、告知はどうするのか、売上を伸ばすにはどうすればいいのか・・・・・・資格は取れても、なかなか経営に繋がらないと悩んでいる人は多いですね」

1人で起業するのは自信がないから、仲の良い友達と一緒に始めるというのも女性に多い傾向だ。友達同士で細かい取り決めをするのは水臭いと、"なあなあ"で始めてしまい、「お金が絡み出したらぎくしゃくして、結局空中分解、ということもあります」

林さん自身、いくつもの壁にぶつかってきた。「事業を始めたころは必死なので、無我夢中でやってきました。でも、ある時期が来ると、これからどうしたらいいんだろうって」

経営について真剣に学ぼうと、5年前、香川県中小企業家同友会に入会した。異業種の中小企業経営者らが作る自主運営組織で、会員数は約1500人。8つの専門委員会があり、このうちの女性委員会には、女性経営者、経営者夫人、女性幹部社員ら59人が登録している。定期的に例会を開き、「経営戦略」「社員教育」など、経営に関するテーマを設け、グループに分かれて議論し合う。「経営について一緒に学び合う」というのが委員会の精神だ。「様々な業種の方がいて、感じ方も皆それぞれ。あっ、そんな視点は私には無かったなとか、得るものはとても多いです」

入会当初の例会で、ある先輩会員に尋ねられた。「何のために仕事をしていますか?」

「お客さんに喜んでもらいたいし、家賃や経費も払わないといけないので、利益も出したい」と答えた。すると先輩会員は、「じゃあお客さんは、林さんの家賃を払うためにいるんですね」

林さんはこの時のやりとりを、こう振り返る。「お金のことよりも前に考えるべきことが、定まっていませんでした。仕事で生きがいを感じたい、お客さんを元気にしたい・・・・・・。先輩は私から、そういった言葉を引き出したかったんだと思います」

何のために仕事をするのか。林さんはまず、「経営理念」を作ることにした。

「色」で生活を楽しく

深層心理を浮かび上がらせるカラーボトル

深層心理を浮かび上がらせるカラーボトル

林さんが代表を務めるフェリスでは、「色」を使った心理カウンセリング「カラーセラピー」や、似合う色(パーソナルカラー)を基にしたヘアメイクやファッションアドバイス、買い物に同行してのスタイリング提案などを行っている。「ライフスタイルセラピスト」。自身をこう表現する。

「色には大きな力があります。内面は同じなのに、服の色が変わっただけで周りの反応が変わる。性格が明るくなったり積極的になったりもする。心地良い色を身につけて、良い心理状態になれたら、仕事も人間関係もスムーズになるし、家族や友達も気分が良くなる。生活がすごく楽しくなると思うんです」

筆者もカラーセラピーを体験してみた。上下2色でカラフルに組み合わされた112本のボトルから、気になる4本を直感で選ぶ。1本目が表すのは"今の気持ち"。2本目は"課題"。3本目は"今置かれている状況"、4本目は"未来"。「未来については、自分のやるべきことをもっとはっきりさせたいと思っているんじゃないですか?」との診断。選んだボトルが深層心理を浮かび上がらせ、カウンセリング(1時間5000円~)で自分自身を見つめ直し、ライフスタイルについて考えていく。

林さんが掲げている経営理念――

「色で、あなたらしさを輝かせます」。同友会のメンバーにアドバイスしてもらいながら作った。

「自分の強みと弱みは何なのか、仕事の芯は何なのか・・・・・・。いろんな依頼が来ても、何もかもを引き受けるというのは違いますし。仕事にブレがなくなりましたね」

女性パワーに光を

全国的に女性経営者の数は増加傾向にある。香川県では、約2万社ある企業のうち、女性経営者は約2300人。比率11%は、全国でも15番目に位置する(東京商工リサーチ2013年全国女性社長調査)。

一方で、林さんは繰り返し、起業した「その後」を懸念する。「男性起業家の方がきちんと先を見ていますね。あそこを目指すならこれとこれが必要なので、今これを準備しておこうとか。女性は目線が目の前にあるのかも知れないですね」。林さんは、それは自分にもあてはまると話す。「一度訪ねて来たお客さんが、それっきり来なくなることがあるんです。満足したから来ないのか、不満だったから来ないのか。私自身も、分析と検証、まめなアフターケアなどが、今後必要だと思っています」

女性委員会の大きな取り組みの一つに、女性向けの起業塾がある。起業するための知識を得たい、起業はしたものの経営のことがよく分からない・・・・・・そんな悩みを抱える女性が学べる場を設け、女性経営者による講義や体験報告を行う。昨年初めて開いた起業塾では、受講者が定員を超えた。2回目は今年11月に開催予定。委員長としての大きな仕事だ。

「女性は、子育てや家事、介護など制約も多いです。実際に起業まではいかなくても、何か出来るんじゃないか、何かをやりたい、と思っている人は多いと思います」

子育てが一段落して飛び込んだ経営者の世界。サラリーマンのご主人は、「反対はしませんが、応援もしてくれません」と笑う。そしてこう続ける。「メンバーの中には、個性的で魅力的な女性がたくさんいます。そんな仲間と一緒に、女性パワー、主婦パワーに光を当てていきたいですね」

林 希世視 | はやし きよみ

ライフスタイルセラピスト
1960年 9月4日生まれ さぬき市志度町生まれ
1979年 香川県歯科技術専門学校 卒業
    宿南歯科医院 入社
1982年 宿南歯科医院 退職
2003年 Feliz(フェリス)創業
2014年 香川県中小企業家同友会 女性委員会委員長
    パーソナルカラー診断、カラーセラピー
    社員研修、専門学校非常勤講師
    ファッションアドバイス
    インテリアカラーアドバイス
《Feliz》
高松市檀紙町1135-1
TEL&FAX 087-885-2977
写真
林 希世視 | はやし きよみ

香川県中小企業家同友会 女性委員会

所在地
高松市林町2217-15 香川産業頭脳化センタービル4F
TEL:087-869-3770
FAX:087-869-3771
発足
1986年
会員数
59名
確認日
2018.01.04

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