コロナ禍の大学生活で思うこと

香川大学創造工学部教授 長谷川修一

column

2020.09.03

香川大学の前期の授業が終了したが、その前半はすべて遠隔授業だった。入学後登校できず、不安な日々を過ごしてきた新入生は本当には気の毒に思う。6月18日からも原則遠隔授業ではあるが、実験・実習科目等については、感染防止対策を徹底した上で対面授業ができるようになった。また、研究室の学生も登校できるようになり、研究活動も正常に戻りつつある。

しかし、その間に大学教育も甚大な影響を受けた。まず留学生も含めて経済的に困窮する学生が増え、香川大学でも緊急学生支援基金等による支援を行うとともに、学外からも多くのあたたかい支援をいただいた。

就職活動も急変し、研究室でも最終面接がオンライン面接だった学生もいる。また、令和4年4月入社予定の3年生のインターンシップを受け入れてくれる機関や企業が激減し、今後の就職支援が大変である。今年は毎年恒例の、卒業生も交えた暑気払いができずじまいである。京都大学総長の山極寿一先生よると、人の特徴は仲間と一緒に食べ、話し、歌い、踊ることにあるそうであるが、それすらままならない。

地域貢献活動も完全に停滞している。公開講座は9月まですべて中止。10月以降に予定されている社会人向けの「防災士養成講座」等の実施できるかどうか予断を許さない。積極的に進めてきた学生による災害ボランティアの派遣にも支障が出ている。学生の成長の場である学会等の研究発表会も中止、投稿のみ、オンライン発表に移行した。

日本は、感染第1波を都市封鎖でなく、国民の自粛によって何とか制御している。現在、感染の第2波といわれているが、第1波と比較して重症者数と死者は、感染者数に対して非常に少ない。

災害医療においては治療優先者の選別(トリアージ)の要点は、まず軽症者に緑色のタグをつけて(後回しにして)、重症者の治療に限られた医療資源を集中することにある。現在のように、指定感染症として無症状者まで法律によって隔離することは、医療崩壊だけでなく、感染者や感染者発生機関に対する過剰な非難や偏見・差別を招きかねないと危惧している。

長谷川 修一 | はせがわ しゅういち

1955年 島根県生まれ
1974年 愛光高校 卒業
1978年 東京大学理学部地学科 卒業
1980年 東京大学大学院理学系研究科修士課程
    (地質学専門課程) 修了
    四国電力 入社
2000年 四国電力 退職
    香川大学工学部助教授
2002年 香川大学工学部教授
2017年 香川大学工学部長
2018年 香川大学創造工学部長

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