香川県は世界に誇るサヌカイト県

香川大学創造工学部教授 長谷川修一

column

2021.03.04

写真はイメージ

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「香川県は何県?」と聞かれたら、どのように答えますか? 私は、迷わず「サヌカイト県」と答えます。サヌカイトはこの地で人類が暮らし始めてから最も長く生産され、愛用された讃岐の名産、シンボルだからです。

サヌカイトは、約1400万年前の瀬戸内火山活動によって誕生したマグマが地表で冷え固まった安山岩です。明治初期に東京帝国大学に招かれたナウマン博士が持ち帰った試料をドイツの岩石学者ヴァインシェンクが鑑定し、代表的な産地にちなんで1891年にSanukit(讃岐岩)と命名しました。

黒光りをしていて最高級の石材とされる庵治石と比較して、隙間は約10分の1と緻密、強度は約2倍です。古銅輝石(こどうきせき)という小さな結晶とガラスが微細な縞模様をつくり、たたくと縞模様に沿って割れ、加工しやすいことから石器の材料として使われていました。

香川で約3万年前の旧石器時代から石器として利用されたサヌカイトは、中国四国地方を席捲しましたが、弥生時代に金属器が普及し利用されなくなりました。その後、金属音を奏でる「かんかん石」として静かに親しまれてきましたが、再び脚光を浴びたのは20世紀の終わり、世界最高級の石の楽器として故・前田仁先生が復活させたことがきっかけでした。前田先生が創作したサヌカイト楽器は天使の音色、太古の響きと世界中から絶賛されました。サヌカイトは世界に誇る讃岐の石なのです。

香川大学では東日本大震災から10年となる3月11日、坂出市金山でサヌカイト楽器演奏によるレクイエムと、神戸大学の巽好幸さんによる講演会「日本列島の誕生:サヌカイト、その誕生秘話」を開催します。私たちは世界的な変動帯、災害列島に暮らしていますが、地球からサヌカイトというプレゼントも授かりました。サヌカイトを地域の宝として誇りを持って守り、地域のために活用できる人が増えてほしいと願っています。

演奏会・講演会は、コロナ禍のため会場への入場は関係者限定ですが、YouTubeで配信予定。詳細はこちら

長谷川 修一 | はせがわ しゅういち

1955年 島根県生まれ
1974年 愛光高校 卒業
1978年 東京大学理学部地学科 卒業
1980年 東京大学大学院理学系研究科修士課程
    (地質学専門課程) 修了
    四国電力 入社
2000年 四国電力 退職
    香川大学工学部助教授
2002年 香川大学工学部教授
2017年 香川大学工学部長
2018年 香川大学創造工学部長

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