次の時代に必要なのは、将来こんな世の中にしたい、そのためにはどんなものが必要か考え、試行錯誤しながら新しい価値を生み出せる人材。「新しいものを創造するには、まず今あるものを“観察”する。それが、気づきにつながると思います」という言葉には、自身の専門である地質学での経験が反映されている。
「想定外」を減らす
現在の地形を観察し、何百万年以上前から今までにその大地でどんなことが起こったかを解明する。当たり前のようにある山も、実は何キロも離れた山から地滑りしてできたと分かる。「土地の成り立ちを知ると、災害予測につながります。いつ、どこで、どんな規模で起こるかまでは分かりませんが、自分の住む土地を知ることで覚悟と準備ができる。『想定外』を減らすことができるんです」。災害に備えて私たちが何をすべきか、自然はそれを教えてくれる先生だと言う。
讃岐ジオサイトは生涯のテーマ
「災害は起こった直後は大変ですが、新たな土地が生まれることで、生活や生産の場ができます。土地の弱みを知り、それを強みに変える知恵を見つけることも活動の目的です」
高校で講義をすることもある。その時は、讃岐ジオサイトの話を通して香川の魅力を伝えるようにしている。「県外出身の私だから気づいた香川の良さを、高校生に知ってほしい。土地を知ることで地元に愛着と誇りがわくと思います」
今までの教育は、普遍的なことを教えていた。「グローバル企業には都合のいい人材かもしれませんが、それぞれの地方にある魅力やその価値を教えないから、勉強すればするほど大都市に行ってしまう。これからは地域の文化を大切にし、グローバル企業の攻勢から地域を守る人材を育てるのも、地方の大学の使命だと思っています」(石川 恭子)
※ジオツーリズム=地質、地形、石など自然を対象にした観光のこと
長谷川 修一 | はせがわ しゅういち
- 1955年 島根県生まれ
1974年 愛光高校 卒業
1978年 東京大学理学部地学科 卒業
1980年 東京大学大学院理学系研究科修士課程
(地質学専門課程) 修了
四国電力 入社
2000年 四国電力 退職
香川大学工学部助教授
2002年 香川大学工学部教授
2017年 香川大学工学部長
2018年 香川大学創造工学部長
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