わかりやすさの罪
著:武田 砂鉄/朝日新聞出版
2020.09.03
「納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うため」の一冊と本の帯にあります。7月に出版され、もう3刷ということですから、このことについて気になっている人は結構いるということでしょうか。
著者は「個人に向けられる定番の低評価として、何を考えているかわからない人というものがあるが、何を考えているかわかっている人なんて面白くないでしょう、といつも思う」と書きはじめます。
何を考えているのか尋ねたり、意見を聞いたり、話し合ったり、結果的には突き放したりすること、それが人間の営みの基本形だと言います。単純な二項対立を想定して、そのどちらか一方に優位を認めずにはおかない性急な姿勢がもたらすものが何かを考えては、とも言います。
この本が出版されたのと同じ時期に、池上彰の「わかりやすさの罠」という本も出ました。わかりやすいニュース解説でお馴染みですが、わかりやすさには、わかったつもりになる罠があると言います。
しかしこの本の著者はどうすれば、わかりやすさから逃れることができるのかと考えます。万事は複雑ですが、一方では単純化してわかりやすく考えようと強制してくる動きにからめとられそうになります。
「スッキリ」や「一気にわかる」から解き放たれ、むしろ「齟齬」や「混在」をこそ獲得するために、どういった方法が残されているのかと作者は問いかけます。
山下 郁夫
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
- 坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。 - 写真
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
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