「油圧」「水」のプロへ “環境整備”で価値観を共有

村上製作所 社長 村上 幸平さん

Interview

2021.01.21

工作機械用など様々な油圧シリンダーを製造する村上製作所長尾工場。 左後方はロボット溶接の様子=さぬき市造田野間田

工作機械用など様々な油圧シリンダーを製造する村上製作所長尾工場。
左後方はロボット溶接の様子=さぬき市造田野間田

「『会社の文化』にする」

整理整頓の行き届いた長尾工場

整理整頓の行き届いた長尾工場

「こんにちは!」「いらっしゃいませ!」……建設機械・工作機械用の油圧シリンダーなどを設計・製造する村上製作所。工場内を歩くと、従業員らが次々と気持ち良く挨拶してくれる。

社長の村上幸平さん(42)は、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の「5S活動」の徹底など、社内の「環境整備」に力を注ぐ。広々とした工場は整理整頓が行き届き、ゴミも落ちていない。「環境整備は見た目だけでなく、人材の教育や、社員との価値観の共有にもつながると感じています」

2009年、予期せぬ事が起こった。先代の父が急逝した。村上さんは入社7年目、30歳の若さで社長を継ぐことになった。時はリーマン・ショックの真っ只中。売上は3分の1にまで落ち込んでいた。「創業以来の大赤字。何をどうすればいいのかも分からず、正直『社長なんて無理だ……』と途方に暮れていました」

だが、そんなことは言っていられなかった。200人を超える社員を養わなければならない。懇意にしてくれている取引先の社長に「今がどん底。もう上がるしかない。前向きに考えろ」と勇気づけられ、覚悟を固めた。

毎日仕事終わりで税理士から経理を教わり、経営塾にも通った。ある日、工場を見て回ると、雑然とした様子が目に留まった。作業机にはタバコの灰皿、社員同士のコミュニケーションも取れていない……。

「足元から見直そう」。まずは工場の整理整頓から始めた。社員からは「こんなことをして何になるんだ」という反発もあった。だが、「方針は変えない。環境整備を『会社の文化』にする」と村上さんは譲らなかった。

現在は「倉庫の不要品を5個減らす」「出荷場での作業時間を短縮させる」などグループごとに、「5S」に関わる計画を半年単位で立て、定期的に発表。「社員らの仕事に取り組む姿勢も変わりました」。相乗効果も生まれた。「業務も整理整頓され、多くの無駄が見つかった。コスト削減にもつながりました」。利益率が上がり、取引先も広がったことで業績は回復。社長になり整理整頓を呼びかけて10年余り、「環境整備」は村上製作所の「文化」になった。

「モノづくりのテーマパーク」へ

村上製作所が手がけたサンポート高松の噴水

村上製作所が手がけたサンポート高松の噴水

村上製作所は戦後間もない1946年、船舶小型発動機メーカーとして、村上さんの曽祖父が創業した。現在は「油圧機器と水関連施設の二本柱。『油圧のプロ』『水のプロ』でありたいと思っています」

大型クレーンなどに使われる油圧シリンダーは、タダノや北川鉄工所、日立製作所など大手機械メーカー向けを中心に、一日に100~150本を製造している。工程には全国的にも珍しい「摩擦圧接機」を一部で導入。金属の接合は「溶接」が一般的だが、「金属同士を高速回転させてこすりつけ、生じた摩擦熱でくっつける。溶接よりも強度が15~30%ほど高く、作業時間も短縮できる新しいやり方です」

水関連では、田んぼの栓から、ため池やダムの水門、自動堰、水処理施設を設計・製作・施工するなど守備範囲は広い。高松港の防潮ゲートやサンポート高松の噴水、NEWレオマワールドの人気屋外プール「アクアサーフ(波のプール)」の造波装置も村上製作所が手がけたものだ。

「将来、会社を『モノづくりのテーマパーク』にしたい」と夢を語る。「工場をガラス張りにして、地元の人がいつでも気軽に遊びに来られる。そんな、モノづくりの魅力を発信する場所にできればと思っています」

「いつかいつかと思うなら今」

東日本大震災を受け、河川などの水を浄化して飲料水に変える装置「アクアキューブ」をつくった。災害時に水を確保できるよう、培ってきた水処理技術を生かして開発した自社製品。国内だけでなく、フィリピンやベトナム、アフリカなど海外からも注目されている。
 
油圧機器や水処理施設など、これまでは企業や自治体からの注文を受けてつくることがほとんどだった。だが、「今後は自社ブランド製品にも挑戦していきたい」と目を輝かせる。「メーカーとして生き残っていかなければなりませんから」

自社製品の一つに「プロレス用リング」がある。根っからのプロレス好きに加え、社長になったばかりの頃、毎日が不安で眠れない夜が続いていた。夜中につけたテレビから流れてきたプロレス番組。「とても勇気づけられたんです」と懐かしむ。「もらった『元気』の恩返しができれば」とリングをつくり、知り合いに紹介してもらった千葉のプロレス団体に届けた。「今後もつくり続けたい。お祭りやイベントのステージとして使うのも面白いと思っています」

大事にしている言葉がある。『いつかいつかと思うなら今』

「『いつかやろう』と思ったことって、結局やらないことが多いものです。思い立ったらすぐにやる。この言葉を胸に、社員と一緒に社会に役立つ製品を生み出していきたいですね」

篠原 正樹

村上 幸平|むらかみ こうへい

略歴
1979年 高松市出身
1997年 高松中央高校 卒業
1999年 四国総合ビジネス専門学校 卒業
工作機械製造、金属塗装会社勤務を経て
2003年 株式会社村上製作所 入社
2009年 代表取締役社長

株式会社村上製作所

住所
香川県高松市新田町甲297-1
代表電話番号
087-841-4181
事業内容
自動堰、水門、水処理施設等の設計・製造・施工
各種油圧シリンダーの設計・製造・組立 他
地図
URL
http://www.murakamiss.co.jp/
確認日
2021.01.21

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