高校生の就職活動

ビジネス香川編集室

Special

2021.06.17

就職活動は、大学生や大人だけのものではない。
香川県内の新規高校卒業者は約8,800人。そのうち、1,400人ほどが就職を希望する。1,400人の若者は、少子高齢化が進む香川県にとって貴重な人材だ。

◎求人票の公開と採用選考の開始は全国一斉
◎求人票の公開と同時に、企業は高校を訪問し、進路指導担当者に自社の紹介や求める人物像などを話す。
◎就職希望者は高校を通して求人に応募する。
◎応募可能な数などは都道府県によってルールが異なる。香川県は9月30日までは、一人につき一社のみ応募できる。10月以降は、複数応募が可能となる。

求人倍率は約3倍、内定率は99%

香川労働局によると、県内の2021年3月の高校卒業者のうち、就職希望者は1,347人だった。求人数は4,065人で、求人倍率は3.02。20年3月卒業者と比べて、求人数は13.1%減、求人倍率は0.23ポイント減。だが、3月末時点の就職内定者は1,338人、内定率は99.3%で、20年並みだった。

求人数は宿泊業や卸売業・小売業で大きく減少し、採用を取り下げる企業も全体数は多くないが例年に比べて増加したという。しかし、「コロナ禍で先行き不透明であるものの、リーマン・ショックの際に新卒採用を中止した企業では、若手の人材が不足。この経験から、新卒採用を続けるところが多いのでは」と、香川労働局職業安定課の大森洋介さん。
県内企業に就職する生徒がほとんど(約9割)だが、県外企業からの求人が増えており、県外企業への就職者も少しずつ増えている(グラフ参照)。県内企業は、高校生に向けて自社の魅力をどう発信していくかが課題だ。

高校卒業後に就職した人の3年以内の離職率は、全国で約4割といわれている。香川は全国よりも低い傾向にあり、大森さんは「各高校での生徒と企業のマッチングや、進路指導が上手くいっているからだと考えられます」と話す。しかし、離職理由で多いのが、職場の人間関係の悩みのほか、結婚や移住を考えたライフプランの変更によるものなど。「コミュニケーション能力や職業意識を養う、人生設計を考えるといったキャリア教育を、より充実させていかなければ」とも話している。

企業と高校生をいかにつなぐか

香川県教育委員会は、生徒と企業のミスマッチを防ぐため「ジョブサポートティーチャー」を県内20の公立高校に派遣。企業で人事や、ハローワークで就職支援に携わってきた人などが就職支援にあたり、高校と企業をつなぐ役割を果たしている。

県教委では例年、インターンシップの実施や、未内定者を対象に10~11月に面接練習など採用選考対策を行うほか、1~2月には卒業生が母校を訪ねて社会人としての心構えを話すセミナーを開催している。しかし、コロナ禍によって昨年は大人数を集めるイベントを中止。今年も大規模なインターンシップの実施は難しい。高校教育課の亀田龍輔さんは「高校生が県内企業を知る機会が少ない。小規模でもインターンシップや企業見学、高校での講演会などで機会を増やしていく必要がある」と話す。

<Case1 高松工芸高校>

全日制課程は工業系と美術系で7科あり、今年度の3年生258人のうち、就職希望者は111人。毎年、生徒の4~5割が就職を希望し、そのうち7割が県内企業に入る。各学科で学んだことの延長線にある仕事に就く生徒が多く、就職後3年以内の離職率は低い。入学時から就職を見据えて学業に励む生徒が多く、全国規模の大手企業に就職する生徒も少なくないという。

2年次に学科ごとのインターンシップを実施しているが、昨年は中止。今年も開催できない可能性が高い。進路指導主事の大美周平さんは「コロナ禍で企業を訪ねる機会がなく、情報収集が難しくなっています。生徒は昨年度の求人票を参考にして、志望企業を絞っているところです。今年も昨年と同じくらいの求人があればいいのですが・・・。本校の生徒は専門的な知識と技術を身に付けているので、就職活動においてアドバンテージがあると思います。『工芸』の生徒であることを誇りに思って、社会で活躍してほしいですね」と話す。

<Case2 多度津高校>

全日制課程は工業系と水産系で6科あり、今年度の3年生188人のうち、就職希望者は116人。毎年、生徒の7~8割が就職を希望し、そのうち8~9割が県内企業に入る。中・西讃地域から通う生徒が多く、就職先も自宅から通えるところを希望するという。

1年次にハローワークと連携した校内企業見学会を実施し、県内企業の従業員から直接話を聞く機会がある。2~3年次に学科ごとにインターンシップを行うが、昨年は中止。今年も実施は決まっていない。進路指導主事の坂本昌司さんは「21年卒業の就職希望者は、卒業までに全員内定が決まりました。企業は人材不足で若い働き手を求めているものの、同時に即戦力となる人材も求めていて、採用基準が厳しくなっていると感じます。本校では、社会を支える基盤となる技術を学べます。卒業生には誇りをもって働いてほしいし、進路指導担当としては、生徒が『天職』と思える仕事と出合えるようサポートしたい」と話す。

地元企業がやるべきことは――

1,400の貴重な人材が、香川で活躍できる舞台を整えるために、地元企業がやるべきことは――。コロナ禍では当たり前となっていることではあるが、感染症防止策を施したイベントの開催、オンラインを含めた効果的な情報発信が、高校生の採用においても大切なことだと言える。また、実業系高校は学科ごとにタテの結びつきが強く、「先輩の体験談」を参考に志望企業を選ぶ生徒が多い。年間休日数と有給休暇の取得率も大きな決め手になるという。高校生に伝わる情報発信とは何か、企業は今一度考える必要がある。

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