自社製品で 新たな販路を開拓

香川シームレス 代表取締役社長 金地 祐一郎さん

Interview

2016.12.15

創業50年を迎えた「香川シームレス」は、ストッキングやタイツ、靴下、レギンスといったレッグウェアの企画、製造販売を行っている。大学卒業後、約10年商社で繊維の知識と営業ノウハウを勉強した金地祐一郎さん(41)は、経営者としての父の姿を見て「何か手伝えることはないか」と帰郷。入社10年目となる2016年4月、父から代表取締役社長を受け継いだ。
10年以上前まで、製品の9割はOEM(取引先の企画・ブランド名で商品を製造販売)だった。発注元に満足してもらえるよう、生地を編む、縫製、染色、成型、装飾などの各工程で高い技術が磨かれていった。「例えば、肌に跡が残りにくくするため生地のつなぎ目が“立たない”ように縫う、マタニティ用のサイズにするため生地をつぎ足す、という調整は手縫製でしかできない。ほかにも職人の手作業は多いんですよ」

一方で、OEMに特化しているがゆえに企画開発、小売店への販路開拓には今ほど力を入れていなかった。そんな会社に転機が訪れる。メインの取引先が倒産したのだ。「私が入社したのは、痛手から何とか立ち直ろうとしていた時期で、少しでも穴埋めをという思いが強かったですね」。しかし、百貨店でも量販店でも衣料系の売り場が減少、市場自体も縮小していた。
パッケージにも力を入れた自社商品シリーズ

パッケージにも力を入れた自社商品シリーズ

そんな逆風の中、力を入れたのが国外の市場開拓と自社商品の開発だった。社長就任後は、女性のおしゃれ需要が伸びる可能性の高い中国やベトナムに自ら出向き、即断即決で商談を進めた。質の高い日本製品はアジアで人気が高く、問い合わせも多い。
女性中心に専任担当を置いて新製品を開発、バイヤー向けの大規模な展示会にも出展するようになった。バイヤーに認めてもらえるようパッケージデザインも一新。ストッキングは傷つきやすく実際に手に取って確かめられないからこそ、中身のよさを丁寧に伝えられ、かつ店頭でも目を引くデザインを目指した。「今後も商品開発に力を入れ、自社商品比率を段階的に上げていきたい。うちのパッケージが身近なお店に並んでいるのを見れば、社員の励みになると思うんです」

最近増えてきた「小ロット多品種」のニーズにも、自社商品があれば対応できるという。必要最低限の製造数に達していない少量の注文に対し、自社の企画を提案して取引先のパッケージで製造。不足分をパッケージだけ変えて自社商品として製造することで効率的に工場を稼働させることができる。
生地を編む編成機

生地を編む編成機

一時の柄タイツブームは下火になり、ここ数年のトレンドは「無地」だと言う。同じ無地でも「脚を細く見せたい」「肌をきれいに見せたい」といったニーズによって編み方、縫製、染色などを細かく変えているが、そんな商品の特徴やこだわりをユーザーにきちんと伝えられないことにもどかしさを感じている。「本当にいい商品とは、お客さんのニーズに寄り添っていること。これからは、ファッションだけではなく健康、美脚などの機能性を高めた商品にも力を入れたい。そしてそれをきちんと発信していきたいですね」

女性たちの「ほしい」を追求し、技術力の高さでそれを形にすることで、新たな顧客獲得を目指す。

編集長補佐 石川 恭子

金地 祐一郎 | かなじ ゆういちろう

1975年1月 坂出市生まれ
1997年4月 帝人商事株式会社(現:帝人フロンティア株式会社)入社
2007年1月 香川シームレス株式会社 入社
2016年4月 代表取締役社長 就任
写真
金地 祐一郎 | かなじ ゆういちろう

香川シームレス株式会社

住所
【本社】丸亀市飯山町川原825-1
TEL:0877-98-2571(本社)
【土器川工場】 丸亀市飯山町東小川1985-2
【綾歌工場】 丸亀市綾歌町栗熊東126-1
事業の概要
レッグウェア全般の企画・製造販売
資本金
6000万円
社員数
221人
地図
URL
http://www.k-seamless.co.jp/
確認日
2018.01.04

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