
塗装から乾燥までの自動ラインを備えた新工場=高松市松並町の日鋼サッシュ製作所
前例変えた飛び込み営業

今月竣工した新工場
「一番」を目指し 未来を変える
高松の小さな町工場だった日鋼サッシュを、全国でも有数の専門メーカーに成長させたのが、15年前に2代目の社長に就いた前田恭典さん(59)だ。1959年の亥年生まれ。文字通り“猪突猛進”の豪快な性格の持ち主だ。「『前例がこうだから』というのが大嫌いなんです。時代の変化に合わせて、会社も変わっていかなければならない。社員には『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』(※)と言い聞かせています」
日鋼サッシュの創業は1961年。前田さんが入社する80年代までは、扉やサッシの部品などをつくって取引先に納入する“完全下請け”の工場だった。その取引先も古くからの繋がりがある特定の業者だけで、営業活動はほぼ皆無。前田さんは先代の社長から「うちは工場主体の会社。仕事は黙っていても入ってくるので、管理部門の経理を担当してみるか」と言われた。しかし、前田さんは直訴した。「営業をやらせてください」
目指したのは、「下請けのみの製造業から脱却し、販売・設計・製造・施工までの一貫した体制の専門業者に変わること」だった。「部品など材料をつくるだけでは利益を上げることはできない。取引先も増やさないと会社の未来はないと思いました」
前田さんは、付き合いが全くない大手建設会社を相手に飛び込み営業を続けた。「もちろん最初は門前払い。端から相手にしてもらえず、担当者に会うことすらできませんでした」。だが、決してあきらめず、とことん食らいついていった。1週間、10日、1カ月と通い続けるうちに少しずつ会ってもらえるようになり、「半年くらい経ったある日、『じゃあ見積もりだけでも出してみるか』と言ってもらえたんです」。一度懐に入ると、さらに攻めた。連日のように自社の製品をアピールし、契約にこぎつけた。「あの時の感激は忘れられないですね」

日鋼サッシュがサッシを施工した
中之島フェスティバルタワー=大阪市北区
かつては数社にすぎなかった取引先は、今では100社を超える。
(※)日本電産の創業者、永守重信会長の経営哲学。前田さんの長女でANAキャビンアテンダントの佳越梨(かおり)さんもこの言葉を大切にしている(ビジネス香川2016年7月21日号「本日、旅日和」参照)
米子から高松へ
だが、大学で知り合った妻・充恵さんが日鋼サッシュの先代の長女。入社が結婚の条件だった。「私の親はもちろん猛反対です。『顔に泥を塗るのか』と、生まれて初めて父親からビンタを食らいました」
一度言い出したら聞かない性格なのは両親も分かっていた。銀行を1年で辞め、米子から高松へ。1984年、25歳で日鋼サッシュに入社した。「実は日鋼サッシュが何の会社なのかも知らずに来ました。実家は弟が継いでくれています」。苦笑いしながら、懐かしそうに当時を振り返る。
「100(ヒャク)-0(ゼロ)の原則」を徹底

防音扉や防火扉など様々な製品が並ぶモデルルーム
今月、新工場が竣工した。敷地面積は約6000m²。扉に施す塗装から乾燥までを全て自動で行える最新鋭の工場だ。「自動ラインを備えたシステムの導入は国内では初めてです」
近年の人手不足に加え、建設業界は仕事がきついというイメージも強い。作業の効率化と人材育成が一番の課題だと前田さんは口調を強める。「大切なのは社員らに還元するために利益を出し続けることです。労働環境も改善し、若い人たちが目指してくれるような魅力あふれる職場にしていきたいですね」
篠原 正樹
前田 恭典 | まえだ やすのり
- 略歴
- 1959年 鳥取県米子市出身
1978年 鳥取県立米子東高校 卒業
1983年 同志社大学文学部社会学科 卒業
鳥取銀行 入行
1984年 日鋼サッシュ製作所 入社
1999年 取締役
2003年 常務取締役
2004年 専務取締役
代表取締役社長
株式会社日鋼サッシュ製作所
- 住所
- 香川県高松市松並町1035番地
- 代表電話番号
- 087-867-1674
- 設立
- 1961年7月24日
- 社員数
- 233人(2018年1月現在)
- 事業内容
- 建具工事業、板金工事業、ガラス工事業、内装仕上工事業
- 地図
- URL
- http://www.nikko-ltd.jp/
- 確認日
- 2019.02.07
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