2021年度上半期(4~9月)香川地区企業倒産状況

東京商工リサーチ

Research

2021.11.04

概況

2021年度上半期(4~9月)香川県企業倒産状況(負債総額1,000万円以上、内整理を含む)は件数21件、負債総額32億6,200万円。倒産件数21件は、前年同期比5件増ながら、9年連続で30件を割り込んだ。過去10年との比較で件数は6番目。負債総額は前年同期比15億8,800万円減、過去10年間との比較で7番目だった。

原因別は「販売不振」がトップ

原因別では、販売不振が16件(構成比76.2%)でトップ、他社倒産の余波、既往のシワ寄せが各2件、その他が1件だった。「不況型」倒産は18件(前年同期14件)、構成比は85.7%だった。

前年同期比では、販売不振が4件、他社倒産の余波が2件、その他が1件増加、放漫経営が2件減少、過小資本、既往のシワ寄せ、信用性低下、売掛金回収難、在庫状況悪化、設備投資過大は前年同期比同数(前期0で当期0も含む)だった。

産業別は「製造業」が

産業別では、10産業のうち6産業で倒産が発生した。製造業が6件でトップ、建設業、サービス業他が各4件、卸売業が3件、小売業、不動産業が各2件だった。農・林・漁・鉱業、金融・保険業、運輸業、情報通信業の倒産は無かった。

前年同期比では、製造業が3件、建設業、不動産業が各2件、サービス業他が1件増加した。農・林・漁・鉱業、卸売業、運輸業が各1件減少した。小売業、金融・保険業、情報通信業は前年同期比同数(前年同期0で当期も0含む)だった。

今後の見通し

東京商工リサーチ高松支社が、香川県に本社を置く企業にアンケートを行い集計する「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」は、2020年2月の第1回開始から今回で第17回となった(2021年8月2日~11日にかけて実施)。ポイントは次の通り。新型コロナの企業活動への影響が「継続している」が72.2%。中小企業の61.8%がコロナ禍前(一昨年)より減収と回答。新型コロナウイルスの収束が長引いた場合、廃業を検討する可能性のある中小企業は9.6%に上り、前回調査から0.9ポイント悪化した。このうち、42.9%は検討時期を「1年以内」と回答。また、31.1%の企業が「コロナ後も売上高は回復しない」あるいは「コロナ後の売上は落ち込む」と減収を見込む等、否定的な見方が多い。

香川県の上半期企業倒産は9期連続して30件を割り込む等依然低水準に留まっている。コロナ禍の金融支援は、倒産抑止策として機能した。感染拡大の当初は、倒産回避策として「とにかく資金を出す」スタンスで、規模を問わず貸出が積極的に実施された。だが、新規借入が難しい企業にも貸出が行われ、さらに業績が落ち込むなかでの通常以上の貸出は「過剰債務」という副作用を招いている。

中小企業の倒産・廃業は、雇用の悪化を招く。新型コロナ感染拡大の影響が残るなか、金融機関は単なる資金供給だけでなく、地域経済の底上げや活性化への配慮が求められる。これまで以上に、企業に寄り添った支援策を検討することが必要だ。

これから年末を控え、運転資金の需要が活発になる時期を迎える。ただ、新型コロナの直撃を受けた中小企業が金融機関に提出する決算書は、財務内容が悪化している。それだけに財務分析やスコアリングによる画一的なリスク判断は避け、包括的な評価や目利き力を活かすべきだろう。

過剰債務となり業績が回復せず、体力が限界に達した中小企業を中心に、資金需要が高まる年末に向けて、息切れした企業の倒産が緩やかに増勢を辿るものと見られる。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 有馬知樹

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