2020年度 香川県「破産会社の社長破産率」調査
破産会社の7割超で社長個人も破産

東京商工リサーチ

Research

2021.12.02

会社が破産すると、社長の7割超が個人破産に追い込まれている。東京商工リサーチ(TSR)では、破産形態で倒産した法人(株式会社、有限会社、合同会社)と社長個人について、2020年度発生分で初めて調査した。

※本調査は、2020年度(2020年4月1日~21年3月31日)に香川県で破産形態により倒産した株式会社、有限会社(合同会社も対象としたが、今回は該当なし)の30社が対象。
※同期間に破産開始決定を受けた個人のうち、TSRデータベースに収録された破産会社の代表者名のほか、破産管財人や管轄裁判所なども取材、確認し、破産会社の社長とした。

破産会社の社長個人破産率は7割超

破産した30社のうち、社長個人も破産したのは22社で73.3%に達した。社長個人の破産開始決定の時期は、法人と同時が19件(86.4%)で、約9割にのぼった。破産会社の社長のほとんどが会社と同様に破産、時期も会社と同時というケースが多いことがわかった。

7産業のうち5産業が高率

破産が発生した7産業の中では、農・林・漁・鉱業、運輸業では社長個人の破産は無かった。個人破産ありの5産業では、建設業、小売業が各100.0%、サービス業他が83.3%、卸売業が80.0%、製造業が71.4%といずれも高率だった。自宅を本社事務所や店舗として使用しているケースなど、社長個人の資産投下や担保提供が背景にありそうだ。

販売不振が最多、比率も高い

原因別で比較した。社長個人の破産ありのうち、17件の「販売不振」が最多で構成比77.3%。以下、「放漫経営」が3件(13.6%)、「その他」が2件(9.1%)となった。「過小資本」、「既往のシワ寄せ」では、会社の倒産を原因とする個人の破産は無かった。最多の「販売不振」では、売上低迷が長引き、資金調達や取引に際し、社長個人の保証を付けるケースが多かったと推察される。

資本金300万円以上500万円未満が最多

資本金別を比較した。社長個人の破産あり22件のうち、300万円以上500万円未満が最多の8件で、構成比36.4%だった。以下、300万円未満が6件、1000万円以上が5件、500万円以上1000万円未満が3件となった。

政府は経営者の早期事業再生などを支援するため、「経営者保証に関するガイドライン」を策定し、経営者保証の弊害解消を進める。金融庁や中小企業庁によると、全国で2020年度に実行された新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資は政府系金融機関が38%(17年度34%)、民間金融機関は27.2%(同16.5%)にとどまり、新規融資の6~7割は代表者の個人保証が条件となっている。これまでの担保や個人保証に依存した貸出で、「経営者保証なし」では資金調達が難しく、必要な借入額を調達できないことが多い。金融機関は債権保全リスクを前提に、保証が厚いほど多くの資金融資が可能だ。一方社長は、借入負担は増しても、必要額を調達できるメリットは大きく、経営者保証の解除に向けた取り組みのバランスは難しい。

経営者保証を減らすには、金融機関の努力だけでなく、社長も会社の財務健全性や将来価値を高め、社長個人と会社の資金の流れを厳格に区分することが求められる。ただ、長引くコロナ禍で過剰債務に陥った企業も増えており、今後、社長の破産率がさらに上昇することも危惧される。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 有馬知樹

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