昔は“恩恵”を誰もが実感できた
例えば、瀬戸大橋が開通するまでは四国―本州間(高松―宇野港)が約1時間かかり、霧や悪天候で船が欠航していたが、今では坂出―児島間が約10分に。輸送条件が改善され企業の製造拠点となる工場が進出するなど、産業の発展にも貢献した。また、早明浦ダムや香川用水のおかげで水不足は改善され、洪水対策の役割も果たしている。
さらにさかのぼれば、まだ車が走っていなかった明治時代。四国をつなぐ「四国新道」が計画された時には、なぜそんなに広い道路が必要なのかと多くの反対を受けながら、車社会の到来や四国の将来を見越して難工事を進めたおかげで、地域が発展した。
“未来”を見すえた先人たちの努力によって造られた社会資本があるから、安心・安全・快適な生活が送れていることを、まずは感謝したい。
あるのが当たり前になった今
そんな中、限られた予算を適正に使うため、国は一定規模の新規公共事業を行う際は、その事業が社会にどれだけ便益を与えるかを分析する「事業評価」を1998年から導入した。事業の実施に必要な費用(用地費、補償費、建設費、維持管理費等)に対して、事業の実施で得られる便益(移動時間の短縮、事故・災害の減少等)がどれくらいかを見るもの(費用便益比=B/C)である。
同じ費用、距離の道路を建設しても、人口減少によって将来交通量が減り便益が低くなる。時代の変化によって社会資本に求める価値も変わっていくため、20年以上変わらないB/Cにおける費用便益の考え方以外の、新たな評価も必要なのでは、という指摘もある。
これから、どんな“価値”で判断する?
ほかにも例えば、自動運転で移動中に娯楽を楽しめるとすれば、走行時間が長い方が価値が高いかもしれない。高齢化で車道より歩道を広げた方が安全、となる可能性もある。新規事業だけではなく、今ある社会資本も新たな視点でみることで、別の価値が見い出せるかもしれない。
価値観が変化する中で、これからは多様な視点で社会資本の意義や大切さを考える必要があるのではないだろうか。社会資本は未来への財産。10年後、100年後を見すえて考えてみたい。
WSワークショップ
●身近な社会資本には、どんなものがあるだろう。
●その社会資本ができたときは、どのような時代だったのだろう。
●社会資本を、あなたならどんな視点で評価する?
【取材協力:四国クリエイト協会、写真提供:四国社会資本アーカイブス】
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